推進派に権限を持たせる

問題は、大半のマネジャーがコスト削減の準備ができていないという点だ。収益を生み、ビジネス拡大に励むほうがおもしろい。だからこそ、会社には、ビジネスのコスト面に喜んで取り組んでくれる推進派が必要だ。景気の冷え込みや突然の市場の変化によってコスト削減が急務となったとき、すでにコスト抑制の推進派を見定め、権限を持たせている会社は俄然、優位に立つ。

大切なのは、こうした推進派を管理しすぎないことだ。現行のコスト削減の取り組みに少人数中核チームを配置するとよい。このチームが、分権化された計画の立案および実施の中心となり、調整を図る。彼らが前面に立って綿密なベンチマーキング、データの収集、診断作業を行えば、コスト削減ターゲットを定めるための確固たる分析基盤が得られるだろう。そうすれば、コスト削減運動を計画するにも、わずか数カ月ほどしか要さないはずだ。会社の中でコスト削減によって収益性の改善に最大の成果が期待できるこのコスト・センターに狙いを定めよう。

コスト削減チームの会社診断を、全社の課題およびコスト削減目標としてまとめよう。ボトムアップではなく、トップダウンで行うことが重要だ。主に事業部ごとに編成されたチームがコスト削減計画を策定すれば、より積極的な協力が得られ、何をターゲットにすればよいかについても見当がつきやすい。このときこそ、コスト抑制推進派にとっては重要な時機だ。求められている成果を上げようとしている各種チームに具体的な目標を与えることによって、強力な監視を実施しよう。

これらのチームに設定されるターゲットは、時にコスト削減キャンペーンの包括的な目標と重ならない場合もある。たとえば、会社のコスト節減の80%は事業活動の20%から引き出しうる、といった一般的なルールをコスト推進派が全社レベルで適用すると、おそらく40%にも及ぶ潜在的節減対象を見落とすことになるだろう。より適切なアプローチは、コスト削減チームにそれぞれの領域でこのルールを適用するよう指示することである。

一方で、コスト削減キャンペーンを始めるに当たっては、先行投資用の資金を取り置いておくべきだ。出し惜しみしては思いどおりの成果は挙がらず、チームは非現実的なコスト節減をなしうると思い違いしかねない。過剰投資も禁物だ。ITへの多額の投資はとりわけリスクが大きい。ただ、IT重視がコスト削減の成功の鍵となる場合が多いのも事実である。

ターゲットが設定され、戦略が全社に徹底されたら、実施が最優先事項となる。週1回の経営陣による検討、単純にして明確な指標、実施に当たるラインマネジャーの1対1の定期的評価などは、厳格な経費抑制を維持するためのきわめて重要な手段である。しかし、コスト削減に照準を合わせた特別報酬制度には慎重であるべきだ。とりわけ特別なコスト削減努力に対するものなど、いかなる種類の報酬制度も適切なものにするのは難しいからだ。

会社の誰もがそれはやりすぎだと考えていても、さらにコストを削減できる余地があるものだ。これが、今までに学んできたことの中でも一番重要な教訓かもしれない。それは、タマネギの皮を剥いていて、さらに下に薄い皮があろうとは思いもしないのと同じだ。が、実際のところ、コスト削減は終わりなき努力だ。これを会社のコア・コンピテンシーにしてしまえば、成長は目前だ。

(翻訳=ディプロマット)