ヒントは全て幼少期にある

もしここで、あなた自身が、自分のビリーフシステムを認識していたらどうでしょうか。

きっと、「ああ、遅刻は私のビリーフシステムにひっかかっているな」と立ち止まることができます。

これこそ、1歩引いて、自分自身を俯瞰している瞬間なのです。

自分自身を俯瞰できると、少し冷静さを取り戻せて、感情的になるリスクを減らすことができますね。

では、自分のビリーフシステムをどのように把握すればいいのでしょうか。

ヒントは全て幼少期にあります。ぜひ、あなたの過去の記憶に強く残っている学校の先生や両親の教訓を思い出してみてください。おそらく、その中にあなたのビリーフシステムのヒントがあるはずです。

●「いただきます」「ごちそうさま」を忘れずに言う
●ゴミはすぐにゴミ箱に入れる
●「ありがとう」「どういたしまして」をちゃんと言う

などなど……。

ビリーフシステムを善悪で判断しない

そして、ビリーフシステムを見つけても、「これはいいビリーフシステムだ」「これは悪いビリーフシステムだ」と分ける必要はありません。

さきほどの「時間を守る」という、一見いいと思われるビリーフシステムであっても、人間関係の摩擦の原因になり得ます。

井上智介『職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全』(大和出版)

ここからわかるように、ビリーフシステム自体に善悪をつけるのは無意味なのです。どのようなビリーフシステムでも、基準から外れた相手に対しては、厳しく接する要素となります。つまり、ビリーフシステムはその人の最強・最大のこだわりであり、思考の偏りとも表現できます。

だからこそ、あなた自身のビリーフシステムを把握しておくことが、何より大切になるのです。そうすれば、イライラしても、自分自身を俯瞰することができるからです。

中には、ビリーフシステムを持っていること自体が面倒だと考える人や、何も考えずに「無」であるほうが楽である、と感じる人もいます。

しかし、ビリーフシステムはその人の考えの核となるものであり、誰もが持っています。

あなた自身のこだわりや価値基準ですから、大切なものです。ここに目を向けずに無視を続けると、他人の評価軸にばかり合わせなければならなくなってしまいます。

ビリーフシステムを変えることはできませんが、自分の評価軸を徐々に修正することは可能です。基準が社会的には称賛されるような内容であっても、基準に達しない時の対応は、怒りと冷静さのバランスが必要になります。

そのバランスを整える柔軟性を持つために、一歩引いて自分自身を俯瞰するだけで、世の中はより生きやすくなります。

誰もが最初からできるわけではないので、実際にやってみて、成功したり、失敗したりしながら掴んでいきましょう。

<POINT>
あなたの最大の価値基準「ビリーフシステム」を知ろう。
周囲にイラッとしたら「ああ、引っかかってる」と俯瞰を。

写真=iStock.com

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。