アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスはプログラマー出身だ。このため会社経営でもプログラミングと似た手法を取る。まずはベータ版を作り、実際に動かしながら改善点を見つけ、修正していくのだ。たとえば顧客数やアクセス数、在庫欠品率といった「重要業績指標」には、0.01%単位でこだわり、毎週全世界で会議を行うという。そうした「理系経営」の凄みを紹介しよう――。

※本稿は成毛眞『amazon 世界最先端の戦略がわかる』(ダイヤモンド社)の一部を抜粋・再編集したものです。

2018年9月13日、ワシントンのイベントで講演するアマゾンのジェフ・ベゾスCEO(写真=ロイター/アフロ)

「コミュニケーションなんかいらない」

アマゾン創業者のジェフ・ベゾスの組織観がうかがえるエピソードがある。研修の際に、数人のマネージャーが従業員はもっと相互にコミュニケーションを取るべきだと提案したところ、ベゾスが立ち上がり、「コミュニケーションは最悪だ」と力説したという。ベゾスにとって、コミュニケーションを必要とする組織は、きちんと機能していないという証拠でしかないというのだ。

ベゾスが求めるのは、協調などするよりは個のアイデアが優先される組織である。つまり、権力が分散され、さらにいえば組織としてまとまりがない企業が理想だという。たとえば、AWS(アマゾンウェブサービス)を開発している部署はアマゾンゴーには興味がない。それがいいというのだ。その意味では、ローマ帝国のように勢力を広げていく、一見、何の事業会社か説明が難しいアマゾンはベゾスの理想をまさに体現しているといえよう。

ベゾスは、理系のトップらしいところが出ているように思う。たとえば、経営数値にあまりとらわれないところだ。公認会計士など、文系の人間は、今期の決算の数字を見るようにトレーニングされているが、理系は後付けでしか勉強していないから、自分のやりたいことをやる。キャッシュフロー経営などは、そこから生まれているのではないか。