商品開発のためインドで苛酷なカレーの食べ歩き

ターニングポイントは2012年だ。

この年から化学調味料、合成着色料、香料の使用を取りやめて、スパイスや素材の香りと味わいを最大限に活かす方向に切り替えた。そして、このときに加えたコンセプトが、「現地に学ぶ」。開発担当者はインドに赴き、味はもとより現地の空気感まで体感したうえで商品開発をする“本場主義”に舵を切った。以来、毎年、インド出張の成果として新商品を投入。多彩な品ぞろえは現地で学んだ成果なのだ。

商品開発のため、担当者がインドのカレー店など訪問。1軒につき6~7種類を頼むので、1日20種類ぐらい食べる日も(写真提供=良品計画)

もちろん、一口に本場の味といっても、伝わる料理はインド各地でさまざま。赴く地域は毎年のカレー開発のテーマに沿って決め、総勢10人ほどで食べ歩く。そう聞くとなんだか楽しそうだが、「おいしいですが、かなり過酷な旅です」と苦笑するのは、同社食品部でレトルトカレーの開発にあたる遠藤優子さんだ。

たとえば、遠藤さんが初参加した昨年10月のインド出張のテーマは「辛いカレー」。商品に辛さを楽しめるカレーが少ないことから掲げられた課題だ。巡ったのは、辛いカレーが多いと言われるインド北西部のニューデリーとアムリトサル。正味5日間の行程で食べ歩いたのはなんと14軒にも達する。

「ホテルのレストランから、地元の食堂まで幅広く回りました。移動のない日は1日3食どころか4食目までひたすらカレー。1軒あたり6~7種類を頼むので、1日20種類ぐらい食べた日もありますね。当然、食べるだけでは終わらず、その都度、味について話し合いをします」(遠藤さん)

カレー巡りの合間には、市場に行ってスパイスなどの食材を探究。食器などカレーの周辺アイテムも見て回って、商品開発のヒントを探し尽くすという。

王者「バターチキン」に次ぐ人気のレトルトカレーは

今年6月に発売された「3種の唐辛子とチキン」は、この現地出張から生み出された新作だ。真っ赤なソースは野菜によってとろみがつき、口にすると鮮烈な辛さが舌に突き刺さる。だが、ただ辛いだけでなく、優しい甘味とうま味がじんわり広がって後味は爽快。パンチの効いた味わいは今夏の酷暑にふさわしく、売り上げでは「バターチキン」に次ぐ人気だ。

無印良品レトルトカレー売れ上げランキング5
1位 バターチキン
2位 グリーン
3位 3種の唐辛子とチキン
4位 ジンジャードライキーマ
5位 キーマ
※2018年8月6日の週の集計。いずれも商品名の最初に「素材を生かしたカレー」が入る

このほかインド系のカレーには、ローストココナッツの食感が特徴の南インドカレー「チキンシャクティ」、カッテージチーズを使った濃厚な味わいの「パニールマッカーニー」、羊肉を使いスパイスをたっぷり効かせた「マトンドピアザ」などを取りそろえた。

「バターチキン」のようなおなじみのカレーだけでなく、マニアックな路線も攻めた品ぞろえの幅広さに無印良品の魅力はあるのだろう。