朝日新聞のダブルスタンダードが「朝日ぎらい」を増やしている

本来、そうした不祥事が起きないようチェックすべきメディアがその役割を果たしていない。特に朝日新聞は、夏の甲子園開催問題を始め、投手の投球制限、トーナメント制による弊害などについて、自社の考えを紙面で述べるべきであろう。

橘玲『朝日ぎらい よりよい世界のためのリベラル進化論』(朝日新書)

こうした朝日新聞のダブルスタンダードが「朝日ぎらい」を増やしていることは間違いない。『言ってはいけない』(新潮新書)を書いた橘玲氏が、朝日新聞出版から出した『朝日ぎらい』が話題になっている。

この本は朝日新聞批判というよりもリベラル批判である。私のようなオールドリベラリストはいまや「守旧派」で、安倍政権の政策のほうがよりリベラルだというのである。

目からうろこなのが、いまの若者たちは、共産党が保守で、自民党がリベラルで改革派だと認識しているから、若い世代で自民党の支持率が高いと分析していることだ。

以下は橘氏から聞いたリベラル批判である。

「日本的雇用を守れ」と主張し、結果として差別に加担している

安倍政権というのは、国際社会ではリベラル、若者に対してはネオリベ(新自由主義=個人の自由や市場原理を再評価し、政府の個人や市場への介入は最低限にする)、既存の支持者に対しては保守、日本人のアイデンティティ主義者にはネトウヨと使い分けているから、あれほどモリ・カケ問題で嘘をつきながらも支持率が急落しないのだという。

たしかに、私のように戦後70数年、護憲をいい続け、平和主義、主権在民、自衛隊は違憲だとしているのは、共産党と同じで何でも反対、既得権を壊そうとしない「守旧派」なのかもしれない。

橘氏は、「日本の社会では『正規/非正規』『親会社/子会社』『本社採用/現地採用』などあらゆるところで『身分』が顔を出す。日本ではずっと、男は会社という『イエ』に滅私奉公し、女は家庭という『イエ』で子育てを『専業』にする生き方が正しいとされてきた」と、日本はいまだに先進国の革をかぶった前近代的な身分制社会だと批判する。「新卒一括採用」も日本でしか行われていない年齢差別だと指摘する。

このような差別的慣行を容認しておきながら、リベラルを自称する人たちは、差別の温床になっている日本的雇用を破壊しないで、逆に「日本的雇用を守れ」と主張し、結果として差別に加担してしまっているのだ。