「史上最悪」と断言したい。7月18日に成立した参議院の選挙制度を変える改正公選法のことである。西日本豪雨や猛暑の陰に隠れて成立したため、マスコミの扱いも控えめで、世論の怒りも「中ぐらい」のようだが、これまで繰り返してきた選挙制度の手直しの中で、最も罪深いものとなっている。問題点を検証しよう――。
2018年7月18日、衆議院本会議で、参議院議員定数を6増する改正公職選挙法が可決、成立した。野党がそろって反対したほか、与党では自民の船田元氏が退席し、造反した。(写真=時事通信フォト)

国民に対する2つのウソ

新しい選挙制度の骨格は以下のようになる。

(1)議員1人あたりの有権者数が全国で最も多い埼玉選挙区の定数を2増やす。
(2)比例代表の定数は4増やす。
(3)現在の比例代表は「非拘束名簿式」だが、その一部を特定枠として「拘束名簿式」を導入する。(非拘束と拘束の違いは後ほど説明したい)

この変更は、重大な約束違反だ。自民党をはじめとした各党は、ことある度に「身を切る改革」を約束している。「身を切る改革」は歳費や各種議員特権の削減も含まれるが基本的には議員定数の削減を意味する。

2012年の衆院解散を前にして野田佳彦首相(民主党)と、自民党総裁だった安倍晋三氏は、定数削減を行うことで一致している。この時の合意は、衆院定数の削減を念頭に置いているが、来年10月には消費税が10%になり国民に痛みを求める時、参院議員の数を増やすということは、どう考えても説明できない。

さらに国会は、2015年、公選法を改正した時、付則で、19年の参院選に向け「選挙制度の抜本的な見直しを引き続き検討し、必ず結論を得る」と明記。抜本改革を約束している。しかし、今回の見直しは「抜本的な見直し」にはほど遠い。安倍首相自身も「臨時的な措置」だと認めているほどだ。

結局、自民党は「身を切る改革」と「抜本的な見直し」を無視したことになる。