200万円から60万円にまで大暴落

出川哲朗(コインチェック)をはじめ、ローラ(DMM)、剛力彩芽(Zaif)と有名人を起用したテレビCMも大々的に流れ、書店には『ビットコイン投資入門』などの本が溢れるようになり、関心のなかった人までもが「ブロックチェーンって何?」と注目するようになった仮想通貨。

仮想通貨NEMの不正流出で謝罪会見するコインチェック幹部(共同通信イメージズ=写真)

2017年1年間で仮想通貨の代表格であるビットコインは20倍まで高騰。17年末、1BTC(ビットコイン)は200万円を超えていた。ところが、1月26日、コインチェックから約580億円の仮想通貨NEM(ネム)が不正に流出したことが大きな騒動となり、ビットコインは2月に60万円台と3分の1にまで暴落。仮想通貨には怪しげな影がつきまとっているのはご存じの通り。

仮想通貨が登場したときに魅力的だったのは、政府や中央銀行が発行する法定通貨のような中央集権的な仕組みではないこと。つまり、グローバル通貨という概念だ。中央銀行が供給量を変えて自国の通貨の価値をコントロールできる従来の通貨と違い、中央銀行に左右されないフラットで非中央集権的な仕組み。国家の輪郭が淡くなったグローバルな時代にマッチした、通貨の革命と歓迎されたのだ。

そして「預金封鎖が突然行われ、預金が引き出せなくなることがない」「デフォルト危機などで国の信用が失われ通貨が暴落してもビットコインは心配ない」「海外旅行で両替するとき、為替レートは日々変動するうえ、手数料もかかるが、仮想通貨なら両替を考えずに利用できる」「銀行で海外送金するよりも手数料が安く済む」「景気が悪化すれば株価は下がるが、仮想通貨は需要と供給で価値が決まるので景気の影響を受けない」などのメリットがうたわれていた。

2008年に起きたリーマンショックで銀行や証券会社を中心とした金融システムに対する不信感。少子高齢化、生産年齢人口の減少、社会保障費用の増大など日本の将来への漠然とした不安は、仮想通貨を肯定するベクトルを加速。そんな背景とともに、日銀の金融緩和政策によるカネあまりの状態も仮想通貨市場へ大量の資金が流れ込むのを後押ししたのではないか、と法政大学大学院教授の真壁昭夫さんは見ている。