仕事を続ける以上は、責任のあるポジションで働きたい。そう思ってきた山崎さんにとって、最初の大きな挫折は昇格試験に落ちたこと。自信満々だったのになぜ? 念願かなって管理職になった後も外国人部下を泣かせてしまうなど、試練は数知れず……。

なぜトヨタから日産、ポルシェへ転職したのか?

「やはり生え抜きでないとダメなのかと思い、会社を辞めることも頭をよぎりました」

ポルシェ ジャパン 執行役員 マーケティング部長 山崎香織さん

日産自動車にいたころ、管理職昇格試験に落ちて、激しく落ち込んだことがある。

大卒で入社したトヨタ自動車での、欧州市場を相手にしたマーケティングや営業の仕事は面白かった。だが、大学時代にフランス語を学んだこともあり、ルノーとの提携がはじまっていた日産で、もっとグローバルに活躍したくて転職した。トヨタ時代から「マネジメントを目指す」という強い気持ちがあったし、日産での昇格試験でも他の候補者に引けを取っているとは思わなかった。それだけに挫折感が強かった。

「自分に対して過大評価していたんでしょうね。若い部下たちを見てわかるんです。人間って自分が思っているほどにはできていません。そう気付くには、ある程度年齢を重ねてこないとね」

加えて、管理職に昇格する条件は仕事の実力だけではない。タイミングも大事だし、社内のネットワークや力学も作用する。上に立てばそれがはっきりと見えてくる。

「そのころの私には我慢が足りませんでした。たとえ成果を上げていても、世の中には思い通りにいかないこともある。そのことを学びました」