年功序列型の人事体系に限界

国内上場企業の役員報酬が増えている。東京商工リサーチの発表によると、2018年3月期に1億円以上の報酬を手にした役員(取締役、執行役、監査役など)の数は前期比15%増の538人だった。

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実績を上げた人材に対して、それに見合った報酬を支払うのは当然だ。だがその意味では、足元の役員報酬額が上昇することは、わが国の伝統的な年功序列型賃金体系が崩れつつあることを明確に物語っている。ただ、わが国の役員報酬は米国などに比べてまだ見劣りする。「報酬は実績に対する対価」という考え方が国内の社会に広がれば、成功を追い求める人が増え、新しい、付加価値の高い取り組みを進める考えが増えることも考えられる。それは、わが国企業の活性化につながる可能性がある。

足元、米中貿易戦争への懸念などから世界経済の先行き懸念は高まっている。そのような状況の中で、伝統的な年功序列型人事体系制度を崩すことは、わが国企業が強みを発揮して持続的に成長する一つの突破口になり得る。

欧米諸国と比べて低い国内企業の役員報酬

2018年3月期、上場企業の役員報酬のランキングを見ると、トップはソニー前社長の平井一夫氏の27億円だった。2~4位にはソフトバンクの外国人役員がランクインした。5位は武田薬品工業のクリストフ・ウェバーCEO、6位にはモノタロウ創業者で住宅設備大手LIXILグループの瀬戸欣哉CEOが続く。トヨタ自動車のディディエ・ルロワ副社長も10億円超の報酬を得て8位にランクインした。

このランキングから言えることは、わが国でもプロ経営者のニーズが高まってきたということだ。それは好ましい。ただ、優秀な人材確保のためには、報酬は積み増される必要がある。わが国でCEOが受け取る平均的な報酬は1億円程度だ。一方、米国では10億円を超えるのが当たり前だ。欧州では5億円前後が経営の専門家(プロ経営者)に支払われる平均的な報酬の水準だ。この水準の違いを見る限り、わが国の役員報酬は少ない。