史上初の米朝首脳会談を実現させ、改めて外交手腕に注目が集まるトランプ米大統領。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長をはじめロシアのプーチン大統領、中国の習近平主席、フィリピンのドゥテルテ大統領ら、世界の名だたる「独裁者」と個人的な関係を構築する一方で、EUやG7加盟国のような民主国家の指導者との折り合いはいまひとつ。その理由は何か。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(7月10日配信)より、抜粋記事をお届けします――。
メルスブローク空軍基地に到着したトランプ米大統領(ベルギー・ブリュッセル近郊)(写真=AFP/時事通信フォト)

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成熟した民主国家が相手なら「政府組織対政府組織」が機能する

トランプ大統領は、成熟した民主国家同士では、トップ同士の関係が少々悪くなっても大丈夫だと踏んでいるのであろう。成熟した民主国家のトップ同士が戦争を起こすことはまずないし、自分ほど独断で無茶苦茶なことをやってくるトップはいないと見ているのだろう。成熟した民主国家においては、メディアや自称インテリたちのキレイごとに左右されるトップが多いので、そこまでの緊密な個人的信頼関係を作らなくても、政府組織対政府組織の関係で何と収まると踏んでいるのだろう。

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だけど、トランプ氏は個人的な信頼関係を築いたとしても、交渉においては厳しく望んでくるはずだ。交渉は交渉と割り切り、人間関係とは切り離す。これも交渉人の典型的特徴だ。ゆえに、この交渉人の特性を逆に利用して、安倍さんは交渉においてトランプ氏と激しくやり合えばいい。トランプ氏も望むところと交渉を楽しむだろう。そしてお互いの交渉結果の出来不出来を肴にして反省会を楽しむだろう。

個人的な信頼関係と交渉事は切り離すのが原則だが、それでも最後の最後は、個人的な関係で泣き付けば、その点は配慮してくれるというのも実社会で苦労を重ねた者や交渉人の特徴の一つだ。ただし見返りはきっちりと求められるけどね。

他方、成熟した民主国家ではなく、最後は国家の指導者の個人的な力量で国家が運営されるような国の指導者相手には、とことん個人的な関係を築いていくのがトランプ流だ。これも交渉人の典型的特徴。交渉相手がワンマン会社であればあるほど、そのトップとの個人的関係が重要になるのと同じだね。

組織同士、国同士は対立しても、トップ・指導者同士ではギリギリの個人的関係を維持する。トランプ氏はそのことを肝に銘じ、北朝鮮の金正恩、中国の習近平、ロシアのプーチン、トルコのエルドアン、フィリピンのドゥテルテや、サウジアラビアにエジプトの国家指導者などなど、その指導者を押さえれば何とかなるという国の指導者とは、個人的な人間関係を築いていく。特に西側諸国が批判するような人物とはあえて個人的関係を築いていく。

米朝首脳会談の直前に行われたG7首脳会談では、トランプ氏は、ロシアを引き入れてG8首脳会談にしようという提案をしたらしい。さらに、西側諸国が徹底批判しているロシアのクリミア半島併合に、トランプ氏は理解を示した発言をしたとの報道があった。「クリミア半島ではロシア語を喋る人が多いんだろ?」と。ある意味このクリミア問題の核心部分なんだよね。クリミア半島はウクライナとロシアのどちらに帰属することが妥当か。クリミア半島をウクライナの領土だと決めつけていないところがトランプらしい。この発言にプーチン・ロシア大統領は大喜びだろう。西側諸国の大親分であるトランプ氏が、ロシアに理解を示したんだからね。西側諸国がどれだけ批判してこようが、プーチン氏はアメリカとの関係がよくなればそれで十分で、ここはチャンスと見ているはず。と思ったら、早速米ロ首脳会談の話が持ち上がってきた。

トランプ氏はプーチン氏に対してはずっと敬意を表してきた。オバマ前米大統領よりはるかに頭が良い、なんてことも言ってたしね。そういうメッセージを出し続けているからこそ、シリア問題においてもアメリカとロシアに決定的な対立は生じない。2017年4月にアメリカがトマホークという巡航ミサイル59発をシリアにぶっ放した時も、きっちりとロシアには事前通告して、ロシア兵に被害が出ないようにしているしね。

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世界から猛批判を受けてでも、事態を動かすために自分の考えをしっかりと主張するトランプの方が、政治家としては誠実だと思うし、交渉人としては力があると感じる。トランプの考えが間違っているなら今度の連邦議会中間選挙や次回の大統領選挙でアメリカの有権者が審判を下せばいい。

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