そうはいっても、無酸素運動がインスリンの効き目を高める効果は見逃せません。体に少し負荷をかけながら運動すれば、体内への酸素の取り込みを増やし、有酸素運動と同じように持久力を付けることもできます。筋肉の強化は高齢になってからの転倒防止にも役立つでしょう。有酸素運動にも無酸素運動にもよい点があるのです。

まず軽い筋トレ、それから有酸素運動を

では、内臓脂肪をもっとも効率よく落とすには、どんな運動が望ましいのでしょうか。スポーツ選手ではない一般の米国人に有酸素運動と無酸素運動を行ってもらい、内臓脂肪がどれだけ減るかくらべた研究があります。

これによると、有酸素運動のほうが消費するカロリーが67パーセント多く、内臓脂肪がよく落ちました。研究者らは、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせる場合も、有酸素運動を優先してメニューを組むようすすめています。

具体的には、筋トレを軽く行ってから有酸素運動を行うのが有効です。筋トレをすると、筋肉や骨を強くする成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンには血液中のブドウ糖と脂肪酸の濃度を高める作用があるため、ここで有酸素運動を行えば脂肪酸を消費できて、脂肪の分解をさらに促すことができるのです。

注意したいのは、内臓脂肪を落としたいのか、筋肉を付けたいのかで最適な実施方法が異なることです。内臓脂肪を落とすには、筋トレ→有酸素運動の順で実施するのがよいのですが、この順番だとタンパク質の合成がおさえられ、筋肉があまり付きません。

これに対して筋肉を付けるのが目的であれば、有酸素運動→筋トレの順で行うのが有効です。有酸素運動を先に行うと、筋トレだけ実施するよりタンパク質の合成が高まります。その反面、脂肪の燃焼は少なくなりますから、今は内臓脂肪を落とすことに集中し、ブレずに継続してください。

筋トレは10分くらい、少し汗ばむ程度行えば十分でしょう。ジムに通わなくても、自宅で腕立て伏せを30回とか、1分間の縄跳びを休みながら繰り返すだけで効果があります。ただし、現時点でかなり体重がオーバーしている人は欲を出すのは禁物です。無酸素運動は心臓に負担がかかるので、まずは有酸素運動だけを続け、5キログラム体重を落としてから筋トレを加えてください。

奥田昌子(おくだ・まさこ)
内科医。京都大学大学院医学研究科修了。京都大学博士(医学)。愛知県出身。博士課程にて基礎研究に従事。生命とは何か、健康とは何か考えるなかで予防医学の理念にひかれ、健診ならびに人間ドック実施機関で20万人以上の診察にあたる。大手化学メーカー産業医を兼務。著書に『内臓脂肪を最速で落とす』(幻冬舎新書)『健康診断 その「B判定」は見逃すと怖い』(青春新書インテリジェンス)、『実はこんなに間違っていた! 日本人の健康法』(大和書房)などがある。