“独学”の成果を上げるコツ

私が出会った経営者の中で「バランスのとれたリーダーだな」と尊敬せずにいられない人というのは、知識を入れる構造が二階層になっているように見える。

1つは、必ずしも実利的とはいえないが、古典や歴史から吸収した知識の層。そこには、人間の本質、物事がうまく運ぶときと運ばないときの根本が含まれている。たとえば紀元前に生きたソクラテスやプラトンの言葉になぜ今、我々が共感するかといえば、「ああ、あの時代もそんなに生きにくい世の中だったのか」と思えるから。夏目漱石だって「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい」と言っている。セネカは怒りの無益さを説いている。そうした処世術の基本となるものは古典が教えてくれる。コンピュータのアーキテクチャでいうとOSのようなものだ。

もう1つは、アプリのような役割を担う知識の層。マーケティングやデジタル技術などの最先端の情報を絶え間なく吸収し、取捨選択して、実際に使えるツールと判断すれば即取り入れる。そこには「自分が持っている知識や経験はすでに古いかもしれない」という疑念や探究心があるから、少し前の自分の経験談を振りかざして周りに迷惑をかけることもない。世の中が変化すると役に立たなくなるようなものについては、自ら白紙に戻す。そうした判断ができるのは、OSの部分を分厚く持っているからこそだ。

では、自分のOSをより強固なものにしようと考えたとき、どんな行動をとればいいだろうか。古典や歴史を学ぶなら、書店や図書館で歴史コーナーに目を向けるのが手っ取り早そうだ。だが、それは賢明な方法ではない。

“独学”の成果を上げるコツは、学びのターゲットを「ジャンル」ではなく、「テーマ」で決めることである(図参照)。