「この会場じゃそれだけの客は入らない」

ところが、許されない失敗を犯してしまう。外資系企業の社長交代パーティーの予約を200名で受けていた。社長の来日に変更があるのでパーティーの日取りを変えてほしいと言われ、同じ宴会場が空いていなかったので、他の部屋を押さえた。宴会部門の上長に「お部屋が変わりました」と伝えると、「この会場じゃそれだけの客は入らない」という返事。

(上)1994年 32歳 グアム、マレーシアで単身赴任 (下)2013年 51歳 都市センターホテル総支配人として、一国一城の主に。一日消防署長も体験

「宴会場の広さをイメージできなかったんです。もう真っ青になっちゃって。案内状はすでに出しているし……」

スタッフみんなが知恵をしぼってくれた。会場をロビーまで広げてバーカウンターを宴会場の外に出し、スタンディングでカクテルを飲みながら代わる代わる新社長と話せるスタイルに変更。

「パーティーが終わるまで冷たい汗が流れっぱなしだった気がします。後で、先方のご担当者さまから『社長交代の席だから、部屋が閑散とするほうが困る。にぎやかな雰囲気でいい会だった』と言われ、ホッとしました。変更に関しては十分注意しなければと肝に銘じた経験です」

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新しい職場に異動すればこんなミスもあるだろう。でもチャレンジは大事だと思う。

「若い子には、もしチャンスがあれば、ひるまずに飛び込みなさいと言っています」

本人も東京への転勤を含め、異動しながらチャンスをつかんできた。なかでも3歳の子どもを日本に残して、1年半、単身で海外赴任をしたのが一番のチャレンジだったかもしれない。

「男性にはNYのホテルなどに1年間研修に行く機会はあったのですが、女性には海外に行くチャンスがなかなかありませんでした。ここで『今子どもが小さいので行けません』と断ったら、2度とチャンスは来ないと思いました」