いま、禅とマインドフルネスに惹かれる人が増えています。「TED×Kyoto」やダボス会議にも出席し、働く人に心のあり方を説く妙心寺退蔵院副住職の松山大耕さんと、パワフルにしなやかに働く人に対して変革を起こし続けるユニリーバ・ジャパン・ホールディングス取締役の島田由香さん。瞑想、禅の効果を実感する2人から、マインドフルネスの本質について聞いた――。

こんなすごい人がいるならこの世界は間違いない

【島田】松山さんは普段、どのような活動をされているのですか?

【松山】普通ですよ(笑)。朝起きてお勤めをして、掃除をして。最近は坐禅にいらっしゃる方が増えていますが、お葬式や法事もあります。

【島田】どうしてお坊さんになろうと思われたのですか?

【松山】もともと寺の長男だったということもありますが、思春期の頃はお寺を継ぐのが嫌でした。お坊さんの嫌なところが見えたり、言うこととすることが違うと感じたり。けれども大勢の方が私が継ぐことを望んでくださっていたこと、そして心の底から尊敬できるお坊さんに出会えたことが大きな要因です。

【島田】どんな方ですか?

【松山】大学院生の頃、農業や農地の研究をしていました。そのとき、長野県飯山市の農家に半年間住み込みで研究をしたんです。実家が妙心寺なので、近くに妙心寺派のお寺はないかと探して、たまたま訪れてみました。すると檀家を一軒も持たず、托鉢だけで生活されている。ご住職に出会い、こんな人がいるのかと衝撃を受けました。オープンで地域の人たちみんなから慕われ、尊敬されているのです。こんなにすごい人がいるならばこの世界は間違いない。そのお姿を見て確信を得ました。