A子とは5回。C子とは2回しかランチに行かなかった

社員との交流を目的に、折に触れて社員を昼食に誘って話を聞く経営者がいた。仕事の話だけでなく、家族のことにも耳を傾けるよう心掛けていた。会食を共にすることで、これまでよそよそしかった女性社員とも打ち解けて、話ができ、社内の風通しがよくなったように感じていた。だが、そこに思わぬ誤解が生じていることに、この経営者は気づかずにいた。

若手社員のA子とは、これまで5回昼食に行っていたが、入社5年目のC子とは2回だった。それがえこひいきとしてC子の不信を買ってしまったのだ。しかもこの件は、当の経営者の耳には届かず、相当時間が経ったあとに他の社員から知らされて、彼は驚愕したという。誰を何回誘ったかを正確に記憶しているわけもなく、C子本人が記憶しているというなら、事実だと認めるしかない。この顛末をきっかけに、この経営者は女性社員を昼食に誘うことをやめ、全社員が集まる忘年会などの全社行事で交流を図ることにした。

経営者が気にせず忘れてしまうことでも、女性社員は記憶している。ささいなことだが、経営者が社員を食事などに誘う際には、どの社員にも機会を平等に提供することが必要だった。

結論だけ教えてくれ、という態度を出してしまった

営業部員として、女性が働く企業での出来事だ。長年に渡り仕事をしていた取引先が、他社に乗り換える動きがあった。取引を続けてもらえるように営業課のD子が急遽交渉した。情報をいち早く入手しD子が迅速に対応したことで、幸運にも、従来通り取引できることとなった。結果を待っていた経営者は、営業課長とD子からの報告を聞いた。

「なぜ取引先が今回のような動きを見せたかというと……」

と、D子はプロセスを熱心に話し始めたが、いつまで経っても結論に至らない。経営者はしびれを切らして「D子くん、結論を言ってくれ。結論を」と畳み掛けてしまった。するとD子は「継続してもらえることになりました」と返答し、不機嫌そうに席に戻ってしまった。なりゆきを心配していた経営者は安堵したものの、なぜ急にD子が不機嫌になったのかわからなかった。

男性は話の途中でも結論を聴きたがる傾向が強いが、女性は結論だけでなくプロセスも重視する。これも男性脳と女性脳の違いだ。もし、この経営者が男女の脳の違いを知っていて、「D子くん、お疲れさま。まず結論を教えてくれ。それから見事契約継続に至ったプロセスを聞かせてくれないか?」と切り出していれば、行き違いは防ぐことができ、部下からの信頼も増したはずだ。