日本のお笑いは世界に通用する。ひとつの事例はテレビ番組『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』の名物企画「笑ってはいけない」シリーズ。ジミー大西さんのハチャメチャなやりとりにはどんな国の人も笑ってしまうという。オーストラリア出身の現役漫才師チャド・マレーンさんは、「本腰を入れて、日本のお笑いコンテンツを海外向けにつくれば、絶対にウケる」と主張する――。

※本稿は、チャド・マレーン『世にも奇妙なニッポンのお笑い』(NHK出版新書)の第9話「日本のお笑いは世界に通じるか」を再構成したものです。

海外で巻き起こる『ガキ使』人気

僕は日本に来るまで、日本人はすごくまじめという印象しかありませんでした。おもろい国だという認識がまったくなかったので、実際に来てみて「なんじゃこれ? 日本人おもろいやんけ」というのがまず驚いたことです。日本人がすごくおもろいこと自体、おもろい。それほど意外だったのです。

海外の人はみんな多かれ少なかれ、日本に来る前の僕と同じ印象を日本人に抱いていると思います。だから僕は、「日本人はおもろいという事実がもっともっと世界に知られていい」と思っています。

チャド・マレーン『世にも奇妙なニッポンのお笑い』(NHK出版新書)

最近はネットのおかげで、少しずつ状況は変わってきました。ネットの動画を通じ、今、世界中に『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系/以下、『ガキ使』)のファンが増えているのを、日本のみなさんは知っているでしょうか。

きっかけになったのは、番組内の名物コーナー、ジミー大西さんの「笑ってはいけない」シリーズです。これがYouTubeでフィーチャーされ、「このおもろいの、何の番組?」と番組自体も注目されるようになったのです。本来は日テレさんが権利を持っているので、YouTubeで流してはいけないのですが、何度消されてもファンがみんな勝手に字幕をつけてアップし続けているのです。

ちなみにジミーさんの「笑ってはいけない」シリーズは、いろいろな教材ビデオに出演するVTRもの。英語教材なのに英語で数が数えられなかったり、警察の教材なのに受け答えがはちゃめちゃだったりと、ジミーさんの天然ボケが炸裂します。

スペインでは地上波で同企画を放送

ジミー大西さんから火がついて、次に注目されたのが「サイレント図書館」という企画。もともとは、K-1選手のアーネスト・ホーストの出演が決まって、言葉を使わずに「何ができる?」となったところから生まれたアイデアです。図書館なので笑っちゃいけないし、静かにしなきゃいけない。そんな設定の中で罰ゲームをやり、どうにかして笑わせようとする。「笑ってはいけない」シリーズの原点になった企画です。

それが人気になって、いまやロシア、アメリカ、スペインで毎週、現地で制作したその企画だけの番組があります。中でもスペインは地上波で、30分番組を放送しているほどです。

『ガキ使』のたった一つの企画が、別の国で何年も続く番組になっている。もっと本腰を入れて、日本のお笑いコンテンツを海外向けにガンガンつくれば、絶対にウケる。そう僕は確信しています。では、日本のお笑いが世界に出ていくためには何が必要か。ちょっとまじめな話になるけれど、考えてみたいと思います。