「幸せな老後」を迎えるために、いま何に備えておけばいいのか。雑誌「プレジデント」(2018年1月1日号)の特集「老後に困るのはどっち?」では、健康、家計、生きがい、夫婦関係、親子関係から終活まで、ジャンル別に「老後の後悔」を紹介しています。第一線で活躍するベテランの専門家が振り返る後悔とは何か。担当編集者がポイントを紹介します――。
「趣味の『そば』を食べてくれる人もいない」
「70歳になり同年代の人たちを見ていていると、昔、仕事に振り回されていた人ほど、いま孤独であることに気づかされます」
そう話すのは、元トリンプ・インターナショナル・ジャパンの社長で、同社を19期連続で増収増益に導いた吉越浩一郎さんです。
定年後には、そば打ちや長唄などやりたいことを思う存分楽しめたら、孤独を感じることなどないのではと思っていたのですが、吉越さんによると現実は厳しいようです。「実際はそばを食べてくれる人もいなければ、長唄を聞いてくれる人もいません。『趣味が生きがい』といっても、実情はさみしいものです」
趣味ならパートナーと楽しむのはどうかといっても、40年近く仕事を最優先に走り続けたなら、パートナーにも相手にされなくなってしまいます。
「2006年に退職後、妻と2人で世界各地のクルーズに10数回出かけました。船内で日本人の母娘二人組に出会うことはあっても、夫婦のカップルはまず見かけませんでした。家庭を顧みないと、結局、妻に相手にされないからなのです。日本人は老後のことを『余生』といいますが、私に言わせれば老後こそが『本生(ほんなま)』。寂しい本生を迎えたくなければ、普段から家族のコミュニケーションを取るべきです」