野球には「乱闘」がつきものだ。なぜそんな暴力が許されているのか。これは「乱闘に参加すること」が密かな義務だからだ。今夏、ニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手も乱闘につっこんだ。メジャーリーグでは「乱闘に参加しないと罰金」というルールまであるという。どういうことなのか――。
マウンド付近で激しくもみ合う、ニューヨーク・ヤンキースとデトロイト・タイガース両軍の選手。(写真=USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

田中将大投手も乱闘に参加

2017年8月24日(日本時間25日)、メジャーリーグで壮絶な乱闘騒ぎが発生した。田中将大投手が所属するニューヨーク・ヤンキースとデトロイト・タイガースとの試合でのことだった。

ことの発端は6回の裏。タイガースの主砲、ミゲル・カブレラ選手が打席に立つと、ヤンキースのトミー・ケインリー投手がカブレラの背中を通るような明らかなボール球を投げた。ここで審判はケインリーを問答無用で退場とし、それに激しく抗議したヤンキースのジラルディ監督も退場処分となる。さらにカブレラとヤンキースの捕手ロマインの間で口論が起き、カブレラが激怒。ロマインを突き飛ばした上に、数発のパンチを繰り出した。ここで両軍のチームメイトが全員グラウンドへ飛び出し、大乱闘へと発展していった。

このプレーに直接関係していない選手の間でも、もみ合い、小突き合い、馬乗りになって殴り合い、壮絶な格闘が10分以上も展開された。この日登板がなかった田中将大投手も大急ぎでベンチから駆けつけ、乱闘の中心部まで突っ込んでいった姿がテレビカメラに収められている。

1試合3乱闘、両チーム合わせて8人退場

しかもこの試合、乱闘は1回だけでなかった。7回にもヤンキースのデリン・ベタンセス投手が死球を与えて2度目の乱闘が発生。8回にはタイガースのアレックス・ウィルソン投手も死球をぶつけ、1試合の中で乱闘3回、両チーム合わせて計8人が退場する大騒動となった。

メジャーリーグ中継を見ていると、こうした死球の応酬や派手な乱闘を目にする機会は珍しくない。一方で、日本のプロ野球では、乱闘にまで発展する試合はまれになっている。同じ野球でありながら、なぜメジャーリーグばかりで大掛かりな乱闘が起きがちなのだろうか。