漫然とサラリーマンを続けるだけでは「億万長者」にはなれない。雑誌「プレジデント」(2017年8月14日号)の特集「億万長者入門」では、5つの方法で富を手に入れた5人にそれぞれの方法論を聞いた。第1回はアパグループ代表の元谷外志雄氏が語る「不動産投資」の極意について――。

20代で自分の家を設計。感触を掴んだ

私は20歳のときに自分で設計して自分の家を造りました。だから、不動産を持つことに対する思い入れは人よりも強かったと思います。家を持つというのは人生の一大事ですが、やってみれば「案外できるんだな」という感触を若い時分に得ることができました。

アパグループ代表 元谷外志雄氏

それで会社を立ち上げたときに、住宅産業をやろうと思いました。27歳のことです。家を造った経験があったから、最初は注文住宅から始めた。注文住宅から建売住宅になって、賃貸マンション、分譲マンションと進化していって、ホテル事業に行き着いたわけです。

不動産の仕事をしてきた私から見ても、不動産投資は長期投資として非常によい投資だと思います。資本主義の歴史を見るとインフレとデフレは交互にやってきますが、インフレの山と山、デフレの谷と谷を1本の線でつないでみると1つの傾向がわかる。全体としてはインフレなんです。短いスパンで見るから上がったり下がったりで一喜一憂しますが、長く不動産投資を続けていれば必ず資産は増えていく。

建物などの普通の資産は、いわゆる経年劣化によって資産価値が失われていきます。その分、会計的には減価償却で経費に計上できる仕組みになっている。一方、経年劣化のない土地不動産は減価償却できませんが、資産価値が上がるにつれて含み資産が増える。これが不動産の有り難さです。

私の場合、利益の出る事業と減価償却で赤字が出る事業を組み合わせて「損益通算で節税メリットを得る」ということを絶えず意識して、事業を展開してきました。たとえば戸建て住宅の建設販売で利益を出しながら、鉄筋の賃貸マンションを造って償却赤字と損益通算する、という具合です。

そのうち土地を平面的に使う戸建て住宅よりも立体的に利用できるマンションのほうが土地効率がいいということで賃貸マンション、さらには分譲マンションに軸足を移した。マンション事業の節税対策としてホテル事業を始めたんですが、今はむしろホテルにウエートがかかっている。収益が出る事業と償却赤字を得る事業の兼ね合いを追い求めてきた結果、いつの間にかここまで資産が増えていたという感じですね。