日頃、“やらされ感”を持ちながら、あるいは、退屈だと感じながら仕事をしている人は少なくないと思います。そのままでは、仕事にやりがいを感じられませんし、生産性も向上しないでしょう。こうした問題を解決するための一手法として、「ジョブ・クラフティング」が注目されています。従業員が、与えられた仕事の範囲や他者との関わり方を、主体的に変えていくことです。従業員が、組織から与えられた役割をこなすだけでなく、持っている能力を活かして、自ら仕事をつくり変えていくことは、いきいきと仕事をすることにつながると考えられています。

カストーディアルキャストは清掃や案内、写真撮影も担当する人気職種。(時事通信フォト=写真)

象徴的な例として、東京ディズニーリゾートのカストーディアルキャストが挙げられます。彼(女)らは、パーク内外の清掃を担当する従業員でありながら、写真撮影や道案内はもちろん、ほうきでミッキーの絵を描いてゲストを喜ばせるなど、さまざまな仕事を主体的かつ柔軟に取り入れることで、よりやりがいのある仕事に変えています。

ジョブ・クラフティングを行うのは、「タスク」「人間関係」「認知(役割)」の3つの要素です。最初に認知面のクラフティングをする、つまり、役割を見直すことによって、タスクと人間関係のクラフティングが行いやすくなります。カストーディアルキャストの場合、自分の役割を単なる掃除係ではなく、「ゲストをもてなすキャストの一員」ととらえ直すことによって、絵を描くなどのタスクや、ゲストに声をかけるといった人間関係を新たに生み出すことにつながっています。

ジョブ・クラフティングが注目される理由のひとつに働き方改革があります。従業員の自律的な働き方を促し、生産性を高めるうえで、この手法は適しています。また、ストレスフルな仕事を、やりがいのある仕事に変えることができれば、メンタルヘルス対策にもつながります。さらに、高齢化が進む中、シニア世代の活用も重要になっています。ミドルの段階からジョブ・クラフティングを身につけておけば、役職を外れたり、異なる部署に異動したとしても、自分のリソースを活かして活躍できるのではないかと思います。