「残した財産を子供にまとめて渡すのは心配で……」

親の残した財産を一度にまとめて渡すのは心配。できれば、生活費として少しずつ使ってほしい。そんな小林さんご夫婦の思いをかなえる制度として、「信託」があります。

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「信託」は、資産を持っている人(委託者)が、その資金や運用の成果を渡したい人(受益者)のために、信頼できる人など(受託者)に、その資産を託す仕組みです。お金や利益を渡したい子や孫に直接渡すのではなく、信託銀行など資産管理をしてくれる人や組織に預けるところがポイントです。

資産の管理を任された受託者は、委託者(今回の場合、小林さん)との約束に基づき、受益者(同、息子さん)のために資産を管理・運用し、その資金や運用の成果を受託者に渡していきます。

委託者が「毎月10万円ずつ、渡してほしい」と依頼しておけば、その通りにしてくれます。親が死んだ後でも、子供は自由に引き出せません。それが逆に、継続的に生活費を得ること、そして計画的に使うことにつながります。

▼毎月○万円ずつ子供に渡してくれる「信託」

「信託」というと、運用商品である「投資信託」を思い浮かべる方が多いかもしれません。それも「信託」の一種ではありますが、ここで取り上げる信託の主な目的は、運用の成果よりも、資産が少しずつ渡るようにするという点になります。

では、万が一、受益者である子供が、すべての資金を受け取る前に亡くなったら、どうなるのか。信託では、その次の受取人も指定することができます。

信託銀行などの金融機関が扱っている「信託」には、いろいろなものがありますが、以下の商品は、お子さまが引きこもりや障がいがある場合などに向いています。

●遺言代用信託:親(委託者)が生きている間は、親がお金を受け取り、親がなくなった後は子供が受け取ります。いずれも、月額○万円という形で、定期的に受け取ることができます。

●特定贈与信託:特定の障がい者を受託者とする信託です。親子でもまとまったお金を渡すと贈与税の対象になります。この信託を利用した場合は、重度の心身障がい者については6000万円、それ以外の障がい者については3000万円までの贈与が非課税となります。

●後見制度支援信託:成年後見制度の利用と併用する信託で、家庭裁判所の指示書に基づき締結されます。判断能力がない人の場合は、成年後見人が財産を管理できますが、まとまった資金よりも定期的に資金が出るほうが扱いやすいでしょう。

●生命保険信託:生命保険の保険金が信託財産となり、定期的に受益者に渡るようになっています。