「僕が1億円あげると言ったら、キミは受け取りますか?」。SBIホールディングスの北尾吉孝社長は、新卒採用の面接でそう質問することがあるという。その狙いは「お金の使い方を聞くため」。貯めるばかりで、資産を使えない日本人の金銭感覚について、北尾氏に聞いた――。
正しい志さえあれば、堂々と稼いでもいい
「僕が1億円あげると言ったら、キミは受け取りますか? それはどういう理由で? 受け取るなら何に使う?」
新卒採用の面接で、私は学生さんにこう質問することがあります。対する答えはまちまちです。「理由のないお金は受け取れない」と答える学生もいれば、「親に世話をかけたから恩返ししたい」「自己研鑚のために旅行に行きたい」と言う学生もいます。人間性が如実に出るからおもしろいですね。
なぜ、このような質問をするのか。それはお金を稼ぐことより、どのように使うかというほうが難しいからです。
そもそも日本人は、お金を稼ぐことに強い執着を持っている人が少ないように感じます。それは、日本人の価値観に東洋思想の影響が残っているからでしょう。たとえば論語の「死生命有り、富貴天に在り」といった思想も影響を与えた1つ。生きるか死ぬかは天命で、金持ちになるか偉くなるかは天の配剤という意味です。
利益を得る際に本当に正しいかを考える
自分がお金持ちになりたくてもなれるものではありません。日本人にもこの考え方が浸透しているので、稼ぐことについて欧米に比べて淡白になっているのでしょう。
もちろん頑張ってお金持ちになろうとする人もいますが、それはそれで構わないと思います。中国古典の中にも「君子財を愛す。之を取るに道あり」という言葉があり、財を築くことに関して悪いとは言っていません。大切なのは、利益を得る際に本当に正しいかを考えることにあります。
「義利の弁」、つまり義と利をわきまえること。お金を稼ぐとしても、東洋では私利私欲のために稼ぐ人を「野心家」と呼び、世のため人のためを考える「志のある人」とは峻別され、高く評価されません。そこさえ間違えなければ、胸を張って堂々と稼げばいいのです。