「お嬢様学校」として有名な聖心女子学院。その姉妹校である不二聖心女子学院(静岡県裾野市)は、生徒の4割が寄宿舎に入っている。偏差値的には難関校ではないが、指定校推薦枠が充実している上智大学に1割以上の生徒が進学するなど進学実績は手堅い。中学受験塾代表の矢野耕平氏は「入学後の精神的な成長が早い。『お買い得』な学校だ」と評価する。今回、矢野氏が同校を訪ね、徹底取材した。その「寄宿生活」の実態とは――。

「聖心」の寄宿舎に入ってみると……目からウロコ

日本全国には寮制(寄宿舎)を備えた中学・高校が数多くあることをご存じだろうか。中高一貫校情報サイト「シリタス」によれば、私立中高一貫校の約130校が何らかの形で「寮制」を導入しているという。

寮の形態はさまざまだが、いわゆる通学生が一人もいない「全寮制」の私立中高はほとんどない。多くはごく一部の生徒が入寮する形態をとっている。たとえば、甲子園常連校の中には「硬式野球部員」だけを入寮させている学校がある。あるいは、男子寮のみ備えていて、女子は全員通学生というところもある。いずれにせよ、子供たちは入寮すると、長期休暇期間以外は自宅へ戻ることはない。

近年は「寮制」を導入する地方の私立中高が、東京で中学入試を実施するケースが増えている。

以下に東京で中学入試をしている代表的な学校を挙げてみたい。

【男子校】
函館ラ・サール(北海道)、静岡聖光学院(静岡県)、西大和学園(奈良県)など
【女子校】
札幌聖心女子学院(北海道)、函館白百合学園(北海道)、盛岡白百合学園(岩手県)、不二聖心女子学院(静岡県)など
【共学校】
秀光中等教育(宮城県)、佐久長聖(長野県)、早稲田摂陵(大阪府)、如水館(広島県)、土佐塾(高知県)、愛光(愛媛県)、早稲田佐賀(佐賀県)、長崎日本大学(長崎県)など

そんな寮制を導入している中高にあって、異彩を放つ女子校が富士の裾野にある。静岡県裾野市の不二聖心女子学院中学校・高等学校は全校生徒の4割が「寄宿舎」に入っているが、生徒たちは「週末帰宅型」のスタイルをとっている。これは珍しい。

▼なぜ寄宿生活を送ると精神的な成長が著しいのか?

私は東京で中学受験塾の代表を務めているが、この学校に興味をもったのは、寄宿舎生活を送っている生徒の精神的な成長が、寮のない他校へ進学した子よりも著しく早く感じられたからだ。

不二聖心の校舎

小学生のときには自分を前面に出せずにいて、何だか頼りなくみえた子が、中学生になって塾へ顔を出した際、ハキハキと自分の意見を言えるようになっていて驚かされた。

「週末帰宅型」の寄宿舎生活には、どんな成長の起爆剤が隠されているのだろうか。この学校はこれまで関係者以外は学内に入れないといううわさがあったが、思い切って学校へ取材を申し込んだところ、趣旨に賛同いただき、寄宿舎も見学することができた。

全国でも珍しい「週末帰宅型」の寮生活の詳細をリポートしよう。