なぜお嬢様の卵は25時30分まで起きているか?

▼寄宿舎のメリット3「苦手な人とのコミュニケーション能力向上」

寄宿舎での人間関係は「濃い」ものになる。

四六時中互いに顔を合わせているのだから当たり前だろう。在校生たちに取材していると、「自分の意見をはっきり表明するようになった」と異口同音に言う。寄宿舎で共に過ごす友人は単なる「友だち」ではなく、「家族」であるからだろう。

長年、生徒たちを見守っている野村先生はこう語る。

「寄宿舎は基本的に気を遣い合う生活です。だから、他人の状況や気持ちを推し量る能力にたけていくようになりますね。あと、卒業生たちが言うのは、『知らない話でもついていける』『それほど仲良くない人でもちゃんとコミュニケーションできる』。そういう点が寄宿生活で得られたメリットだと感じているみたいです。これは社会に出ると本当に役立つと言いますね」

そして、野村先生は次のようなエピソードを付け加えた。

「高校3年生が寄宿生活で悩むのは夕食の時間です。夕食は一つのテーブルに中1から高3までの『縦割り』で席につきます。すると、最上級生である高3がその場でどんな話題をふるか、どう盛り上げているか、あまり親しくない下級生であってもいかにコミュニケーションを図っていくか。何より下級生から『つまらない上級生』であると思われたくない(笑)」

▼寄宿舎のメリット4「スマホ禁止! 学力を高められる環境」

東京都目黒区に自宅のある高校1年生は、寄宿舎では勉強がはかどるとうれしそうに言う。

「家に帰っちゃうと、ついパソコンやスマホに手が伸びたり、テレビに見入ったりするのですが、寄宿舎ではそもそもスマホは禁止です。周囲もちゃんと勉強しているし、自分も『あ、しっかり勉強しなきゃ』という気持ちになります」

取材に応じてくれた中高生と寄宿舎の寝室の様子

寄宿舎の中では「スタディルーム」と「寝室」が完全に分離している。スタディルームには生徒1人につき1台の机が与えられている。このような空間づくりが生徒たちにけじめのある生活習慣を生み出しているのだろう。

「だから、テスト期間中は家に帰りたくないって思ってしまうんです」

そう言って笑うのは、高校3年生の子。

そういえば、学校が配布している「寄宿舎手帳」をチェックすると、高校2年生と高校3年生は希望すれば、それぞれ25時、25時30分まで勉強できるという。睡眠不足に陥ることはないのだろうか……と不安になったが、よく考えるとここは学校と直結した寄宿舎である。自宅通学の生徒たちと比べると、朝はゆっくりと過ごせるため、その分夜を有効に活用できるのだろう。