社団法人をつくって女性演者の出番を増やす

入社当初、女性の大道具は森本さんを含め2人しかいなかったが、今は4人に増えている。

「私は『やりたい』という気持ちだけで、がむしゃらに走り続けてきました。女だからと考えてしまうと、前に進めなくなるので、後輩たちにも、年齢や性別にとらわれず、思いきり仕事に取り組んでほしいです」

そんな彼女は今年1月、同じ古典芸能の世界で働く同世代の女性3人と、「関西伝統芸能女流振興会」という社団法人を発起した。邦楽や日本舞踊などに携わる女性や若者の活動を支援するのが目的で、今年の12月には国立文楽劇場の小ホールで公演を行う予定だ。

「古典芸能の裏方を続けてきて感じるのは、女性の裏方が増えている一方で、女性の演者の数がどんどん減っていることです。その理由の1つは、発表の場が少ないこと。それなら発表の場をつくっていけばいい。私たちのような女性の裏方が中心になって、演者の女性を盛り立てていきたいです」

撮影=伊藤菜々子