9月25日、小池百合子都知事が率いる希望の党が立ち上がった。政策の目玉のひとつは「脱原発」。かつての「師匠」である小泉純一郎元首相にも接近し、「原発ゼロ」をアピールしている。だが、小池氏は自民党の総務会長だった2011年7月、「私は『脱原発』ではなく、『超原発』」と発言している。付け焼き刃の「原発ゼロ」で総選挙を乗り切れるのか――。
2009年8月、衆院選で小池百合子衆院議員(当時)の応援にかけつける小泉淳一郎元首相。当時、小泉元首相が候補者の応援に立つのは異例のことだった。(写真=中西祐介/アフロ)

あえて会見をぶつけて首相をかすませた

9月25日、小池百合子都知事が率いる希望の党が立ち上がった。この日は安倍晋三首相が記者会見し、衆院解散を正式表明している。そのことはもちろん永田町の全員が知っていた。

ニュースを発信しようとする立場なら「首相会見の日は避けよう」と考えて他の日に発足するのが普通だ。あえて25日に会見をぶつけ、安倍首相の存在をかすませてしまうのだから、さすがとしか言いようがない。しかも民進党を事実上のみこんで、野党再編の先頭に立とうとしている。

その小池氏は、かつての「師匠」である小泉純一郎元首相とタッグを組み「原発ゼロ」を前面に掲げ、選挙戦に臨もうとしている。

25日の会見で、小池氏は希望の党の理念に「原発ゼロ」を盛り込むこと表明。「ゼロを目指す工程を作成しなければならない」と語った。その小池氏はその日、約20分間、都庁で小泉氏と「極秘」に会っている。

「極秘」に会ったのだが、そのことをあっさり認めたのも小池流。追い掛ける記者に「原発について話しました。頑張ってくれと励まされた」とささやく。意識的に情報を拡散させようとしているのは明らかだ。これも、小池氏らしい手法だ。

小泉氏は、政界引退後、「脱原発」に目覚め、その伝道師的な存在として全国行脚している。2014年の都知事選に出馬した細川護熙元首相と2人3脚で、街頭演説。内容は脱原発一辺倒だった。

その後、小泉氏は安倍晋三首相にも脱原発を進言しているが、安倍氏は乗ってきていない。そこで、小池氏と急接近したのだ。

小泉劇場のヒロインだった小池氏

小池氏と小泉の関係は深い。2005年、小泉氏が「郵政解散」を仕掛けた時、郵政民営化法案に反対した議員に対する対抗馬として、従来の兵庫6区から東京10区にくら替えして出馬。「元祖刺客」候補としてマスコミで注目された。

小泉劇場の主役は言うまでも小泉氏だが、小池氏の存在も、立派な「主演女優賞」ものだったのだ。2人の蜜月は、その後も続く。小池氏が2008年の自民党総裁選に出馬した際も、小泉氏がサポートした。今回の衆院選にあたり、2人がタッグを組んだのも自然の流れと言えなくもない。