「パワーポイント」に文章を書き込むとき、フォントのサイズはどれぐらいに設定しているでしょうか。外資系コンサルティング会社で「達人プレゼンター」として活躍してきた三谷宏治さんは、「フォントを大きくすれば、自然と論理的な思考ができるようになる」といいます。三谷さんが「プレゼン上達のコツ」を解説します(全3回)。

※以下は三谷宏治『ゼロからのプレゼンテーション』(プレジデント社)からの抜粋です。

読んでわからないものは聴いてもわからない

あなたのプレゼンテーションの資料は、声に出して読んだとき、相手が「聴いてわかる」でしょうか。本当にシンプルでわかりやすい文章や表現でなくては、「聴いて」わかりはしません。これは資料が「わかりやすいかどうか」の指標になります。

『ゼロからのプレゼンテーション』三谷宏治著 プレジデント社

人間の脳はいまだ、文字を読むための十分な進化を遂げてはいません。私たちは文字を読み始めてまだ数千年しかたっていないのだから当然です。脳が文字を一度に処理できる量は限られていますし、シンプルな表現でないとすぐ混乱します。

一方、書きもの自体は、つい長くなり、装飾的になりがちです。確かに歴史的には、小林秀雄の芸術評論を筆頭として、長くて複雑で形容詞や漢語の多い文章ほど「名文」でした。そしてそういった文章を読みこなす訓練こそが、脳の処理能力向上には最適でした。

個人的には小林秀雄、大好きです。しかし、それでは「伝わる」書きものとは言えません。人間は書きものを黙って読む(黙読)ときでも、頭の中では音読しているのと同じです。だから、「伝わる」書きものとは、「聴いてわかる」ものなのです。

言いたいことは、まず文章で書き下す

大学4年の夏、ボストン コンサルティング グループ(以下BCG) でインターンをしていました。40代後半のベテランコンサルタントが突然、われわれチームの部屋に入ってきて言いました。「おいお前ら、インターンやってるんだって。30秒やるから、なんか面白いこと言ってみな」なにか伝えようとモゴモゴもがきましたが、「つまんねえな」と一言残して彼は去っていきました。でもつまりはそういうこと。本当に伝えたいことは、図や絵に頼らず30 秒で話せないとダメなのです。なにか伝えたいことができたなら、まずは、文章にして書き下しましょう。図なんて書きません。文章だけで、ストーリーを描き出すのです。分量は、最大でもA4レポート用紙1枚で。そこで、シンプルでわかりやすく、驚きのある『物語(ストーリー)』になっているか、よくよく読み返してみましょう。これでよしと思ったら、人に読んでもらいます。大抵「よくわからない」と言われるでしょう。そこからまた推敲を重ねます。最後は、それを口頭で誰かに伝えてみましょう。1回読むだけで相手にすっきり伝われば合格です。聴いて覚えていられる情報量は限られています。その限界のなかで、理解できるシンプルなロジックになっているか、構造になっているか……。そのチェックを入念に行いましょう。パワーポイントに取りかかるのは、それからでいいのです。