大学卒業後、営業職としてバリバリ働いていた長男は30歳目前にひきこもりに。その生活もすでに8年。60代の両親は「自分たちが死んだ後も、息子が生活保護の世話にならずに済むように」と考えているが、試算すると約2700万円の預貯金は存命中に底をついてしまうことがわかった。家計再生のためには、息子への“愛情予算”を削る必要がある。両親が選んだ結論とは――。

父68歳年金受給 母63歳自営業 長男38歳ひきこもり

関西近郊在住の60代のご夫婦から相談依頼がありました。相談が入ると、事前準備シートをお渡しし、面談日までに、生活費や収入、資産などを洗い出し、書き込んでいただくようお願いします。少々、面倒な作業かもしれませんが、お金のことを考える第一歩として、家計の現状をご自身で把握していただくために大切な工程と考えます。ご夫婦は、しっかり書き込まれたシートを机に並べて、不安げな面持ちで座っておられました。

写真はイメージです

「ひきこもりの長男(38歳)が、親亡きあとも生活保護に頼らず、長女(33歳)に経済的負担をかけることなく生きていくために、なんとか最低限のお金を残してやりたい。いくら残しておけばいいのか教えてほしい」

家計管理を担う、もの静かな父親がそう切り出しました。

「私が年金生活に入り、貯蓄の取り崩しが始まりました。生活費の不足分に加え、自宅のリフォーム代や車の買い替えなど、近い将来、まとまったお金が出ていくことが予想されます。今後の支出をざっくり計算してみたところ、子供にお金を残すどころか、両親が生きている間に貯蓄が底をつきてしまいそうで、不安になりました」

▼「長男が働けなくても、生きていけるだけの財産を残したい」

ひきこもりの長男は、大学を卒業して就職し、営業職に就いたそうです。やりがいをもってイキイキと働き社内で大活躍していたのですが、30歳を目前に、責任ある仕事を任されるようになったころから、急に会社を休みがちに。部屋にひきこもるようになり、結局、退職せざるを得なくなったとのことです。なぜ、会社を休みがちになったのか。その理由は、今でも、不明なままだそうです。働きたいという思いや焦りは感じるそうですが、なかなか動けない。本人ももどかしさを抱えているだろうとのことでした。

もうすぐ、長男も40歳。もし、この先、長男が働けなくても、生きていけるだけの財産を残してやりたいという切実なご両親の思いが伝わってきました。