中国空軍は今年8月、6機の爆撃機を東シナ海から東京に向けて北上させ、紀伊半島沖で引き返すという訓練を行った。領空侵犯はなかったが、そこで想定されるシナリオは「東京の爆撃」だ。「北朝鮮危機」のウラで、中国はなにを狙っているのか――。

中国最大の爆撃機6機が東京方面に進行

8月24日午前、中国空軍のH-6 爆撃機6機が東シナ海から沖縄本島・宮古島間の公海上を通過して日本列島に沿う形で紀伊半島沖まで飛行した後、反転して同じ経路で東シナ海へ戻った。

このルートを中国軍機が飛行したのは今回が初めてだが、問題は6機もの爆撃機の飛行目的だ。中国軍が保有する最大の爆撃機であるH-6爆撃機によるあまりにも露骨な飛行は、日中関係の真の姿を如実に物語っている。

中国のH-6爆撃機。防衛省統合幕僚監部の発表資料より。航空自衛隊撮影。

しかも、申進科・中国空軍報道官が同日(8月24日)、「これからも頻繁に飛行訓練を行う」と発言していることから、自国の安全保障戦略を推し進めるためには、日中関係の悪化も辞さないという中国の姿勢が見て取れる。

北朝鮮東北部には「埠頭」を確保

中国軍機は太平洋だけでなく日本海上空にも飛来している。中国軍機が対馬海峡を通過して日本海へ入ったのは2016年1月31日が初めてで、H-6爆撃機が確認されたのは2016年8月からである。

今年(2017年)1月9日には、H-6爆撃機6機、Y-8早期警戒機1機、Y-9情報収集機1機など計8機が、対馬海峡上空を午前から午後にかけて通過し、東シナ海と日本海を往復している。この時は、翌日に中国海軍のフリゲート艦2隻と補給艦1隻が、対馬海峡を通過して日本海から東シナ海へ向かっているため、H-6爆撃機の飛行目的は空対艦ミサイルによる対艦攻撃など、海軍艦艇との共同訓練だったと思われる。

昨年8月には日本海でミサイル駆逐艦などが演習を行っているが、今月(9月)中旬から下旬には、日本海とオホーツク海でそれぞれ中露海軍が合同軍事演習を実施する予定になっている。

また中国は、北朝鮮東北部にある羅津港の埠頭について、50年間の租借権を取得している。羅津港は日本海沿岸に位置しており、ここを海軍の拠点とすれば、乗組員の休養や補給のために頻繁に対馬海峡を往復しなくても、長期にわたり日本海で行動できるようになる。