食生活について漠然と知っていることがある。野菜は残さず食べるように言われるし、白米より玄米のほうが体にいいらしい。それらの科学的な根拠をきちんと解説した本が出た。著者はスタンフォード大学の若手研究者夫妻で、キーワードは「腸内細菌」(マイクロバイオータ)である。

大腸内の細菌には、ヒトが消化できない食物繊維を分解し、腸が吸収できるようにする働きがある。これらの細菌と共存することは、健康維持のためとても重要なのだ。

ところが現在、この大切な腸内細菌が危機的状況にある。大量生産される食品は、いずれも高カロリーで甘い。しかも、腸内細菌を養う食物繊維を含まず、賞味期限を延ばすため過度に殺菌されている。さらに現代人が服用する家庭薬もそうだ。抗生物質は腸内にいる大多数の菌を標的にしており、病原菌以外に善玉菌まで殺してしまう。

腸内細菌の研究が進むと、驚くべき利益をもたらすことがわかってきた。免疫系を調整し、病原菌を寄せ付けず、代謝を円滑に統括しているのだ。そもそも消化管に微生物がいる理由は、体から細菌を完全に排除するのが不可能だからである。

「微生物だらけの世界で微生物のいない状態を維持するには、絶え間なく遭遇する微生物を排除するために、免疫系はいっときも休まず途方もない努力をして、微生物を追い出さなければならない」(35ページ)。こういう非効率な方法はやめて、ヒトは腸内細菌と同居の道を選び、その恩恵を受けようとした。

腸にはさらに重要な機能がある。腸は脳と神経系統で繋がっており、「どれほど空腹か、ストレスを感じているか、病原性の微生物を食べたかなどにかかわる情報を、たえず相互にフィードバックしている」(172ページ)。私もよく経験するが、ストレスを感じると消化器のあたりが痛くなるのは、脳と腸が連結しているからだ。著者はこう結ぶ。「自分の健康について考えるとき、体内の微生物に思いを馳せ、食事、生活習慣、自分が下す医学上の判断が、自分の片割れである微生物に与える影響について想像力をはたらかせよう」(275ページ)。

本書に記された経験は、著者夫妻がわが子を育てる中で得られたものだ。腸内細菌のために食生活を整えたら、長女の便秘が治ったのである。よって、長年善玉菌を痛めつけてきた人も、今から食生活を改善すれば昔のいい状態に戻れるのだ。

本書は腸内細菌に関する最先端の知識が得られるだけでなく、すぐ行動に移せる実用書でもある。最終章では野菜や雑穀に加えヨーグルトや発酵食品を勧める。知識は力なり。巻末に掲げられたレシピを活用して、次の食事から少しずつメニューを変えてみようではないか。