子どもがテストで100点満点を取った。手放しで褒めたいところだが、ちょっと待ってほしい。国立大学教育学部附属小学校の松尾英明教諭は、「褒めることで、かえって勉強嫌いにしてしまうリスクがある」という。子どもを勉強好きに変える「声かけ」とは――。

勉強嫌いの子を勉強好きにする「声かけ」があった!

ベネッセ教育総合研究所のアンケート*によると、「勉強が好きな子ども」の割合は学年を追うごとに下がっていくことが明らかになりました。*:2014年「小中学生の学びに関する実態調査」

下がり方が顕著なのは、小学生から中学生になったタイミングです。小学6年生(55.6%)から中学1年生(38.8%)の間でもっとも減少幅が大きくなっています。6年生までは「好き」が過半数だったのに、中学からは「嫌い」が7割近くになるのです。「勉強嫌い」への転換点といえます。

中学生になると勉強する科目が増え、その内容も複雑になることに加え、高校受験を控えているので「テストの点数」という目に見える「結果」がより重視されてきます。「結果」を求められて「比較」される。成績上位者は、いわばピラミッドの先端部分に君臨する、ひとにぎりの生徒たちです。

中学1年生は、より100点に近い者が胸を張れる競争社会の始まりです。

序列の下の子どもはうなだれ、やがて勉強が嫌いになっていく……。例年、そんなパターンを繰り返していますが、教師や親の取り組み方によっては、勉強嫌いな子どもを勉強好きにすることは可能です。以下、教師の現場の視点から、その方法を探っていきます。

「100点」に何と反応するのが正しいのか?

結論から先に言うと、子どもを勉強好きにするには、結果より過程を大切にすることが重要です。結果よりプロセス重視。しばしば言われることではありますが、これがなかなか実践できないのです。

たとえば、わが子がテストで100点満点を取ったとします。親として、何と声をかけますか? 多くの反応は次の3つに大別できます。

A:「100点なんてすごい!おめでとう」
B:「気を抜かないで、次も頑張ってね」
C:「よく頑張っていた結果ね」

一見、どれも大して変わりません。しかし、勉強をやる気になるかどうかなど子どもへ与える影響は全く異なります。それぞれの声かけに対する子どもの気持ちを分析しましょう。