日本IBM
障がいのある学生にインターンシップの機会を

(左)日本アイ・ビー・エム 人事 ダイバーシティ企画 部長 梅田 恵さん(右)Access Blueインターンシッププログラムの様子。手話での同時通訳をはじめ、障がいがあるどんな人でも力を発揮できる環境を整える。

ダイバーシティを世の中に広げるという意識は日本IBMにも強い。17年には同社は、日本でビジネスを始めて80年を迎える。その間、新聞社の新聞製作の電子化や、製鉄所のコンピュータ制御、コンビニATMなど日本初、世界初を形にしてきた。新しいものを社会に広げる精神はダイバーシティでも同じと人事ダイバーシティ企画部長の梅田恵さんは言う。

「100年前はIBMもベンチャーで、優秀な人材を獲得するため、広く多くの人々の中からやる気のある人を採用していたのです」

元々、マイノリティの活用に積極的だった同社だが、今のダイバーシティの流れをつくったのは、米IBMが1990年代前半に経営危機に陥ったときCEOに就任したルイス・ガースナー氏だ。「ダイバーシティは企業競争力をつけ、企業体質を強くするための施策である」と号令をかけた。

日本IBMも他社に先駆けて、女性、障がい者、LGBTなどの活躍を支援してきた。取材した日はちょうど、障がいがある人を対象とする「Access Blueインターンシッププログラム」の発表会が開かれていた。6カ月以上の長期のインターンシップの間、テレワークも使いながら、会社に貢献し将来につながる開発・提案を行う。

参加者たちは発表後、「自分に合った役割を見つけることの重要性を学んだ」「障がいが違うとチャレンジしなければいけないことも異なる」などと感想を述べ、有意義なインターンシップであったことをうかがわせた。

女性も再フォーカスされている。米IBMでバージニア・ロメッティ氏が女性で初めてCEOになった同時期に、日本IBMで会長になったドイツIBM出身のマーティン・イェッター氏は、女性社員に「もっとアピールしなさい」と言って組織を活気づけた。女性が経営層に入ると組織は変わる。ただし、1社だけでは世の中は変えられない。

「日本IBMがいくら女性の営業職をたくさん採用しても、取引先から『担当を男性に代えてくれ』と言われたら活躍の場がありません。自分たちの思想ややり方を広めていくことは、回り回って自分たちがどんどん強くなることなのです」(梅田さん)

外資系のダイバーシティは「異なることを受け入れる」から「異なることを活かす」へ発展、それを社会の価値観にするフェーズに入っている。

▼IBMの取り組み

「IT化は進んだけれど価値観が変わらない会社」から……
・バックグラウンドが違う人を活かす
・日本発・世界初を目指す
・自社で成功したことを他社に広める

<こんなこともやってます!>

●J-win
「NPO法人ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク」の略称。IBM社内の活動から、企業の枠を超えた女性のネットワークをつくるため、2007年に設立された企業メンバー制の団体。

●Access Blue インターンシッププログラム
2015年3月から約半年間行われた、20代、30代のさまざまな障がいがある人を対象としたインターンシッププログラム。

●work with Pride
日本の企業内で「LGBT」の人々が自分らしく働ける職場づくりを目指す任意団体として、2012年に設立した。企業の人事担当者と当事者を対象としたイベントを開催している。

撮影=岡村隆広