勤め上げた古巣に派遣社員として戻る

現役から定年後まで、「生涯一社」に勤め上げる人生もある。清水均氏はシニア専門の人材派遣会社である高齢社に登録し、かつて在籍した古巣のキャプティに出向する。

インフラ機器セールス 清水 均(67歳)

「定年退職するとき、キャプティ本社に挨拶に伺いました。そうしたら昔から知り合いの部長さんに『清水さんこれから何するの?』と聞かれ、『どこかで働こうと考えています』と答えたら、『高齢社から出向という形でまたやってくれないか』と言われ、今に至ります」

同社に高卒後入社した際、清水氏が最初に配属されたのは工事部門。一般道路に埋設された都市ガスの本管から家庭に配管することが主な業務だった。次に、レンジや給湯器などの家庭用ガス器具の販売に移る。35歳で営業主任になり、44歳のときに営業所長を任された。ここで清水氏は、営業の最前線を司る中間管理職にとって、もっとも重要な資質とは何かを思い知る。

「結局、コミュニケーションをどうとるかです。頭ごなしに指示を出すのでは人間関係も仕事も上手くいきません。相手が何を考えているか、掘り下げて『言いたいことはこういうことか』と突っ込んで聞くようになりました。営業というのは、相手の頭の中に夢を植えつけるような仕事。社外の取引先に対しても感謝されるためにはどうすればいいか、どうしたらもっと喜ばれるか、いつも考えるようになったのです」

そんな清水氏は、月に約25日もフルタイムでの勤務を任せられるほど、古巣の出向先から頼りにされている。勤務する営業所が設備を納入するハウスメーカーの新築住宅のイベントがあれば、率先して手をあげ、進行がスムーズに行くよう裏方を手伝う。終了後には年下の同僚スタッフから「清水さんのおかげで無事終わりました」と肩を叩かれるのが何よりの励みになるという。定年期を迎えた後輩たちからの相談もしょっちゅうだ。

「なかには向上心のない者もいます。そんな後輩には、『甘えるな! 65歳まできっちり勤め上げろ。そうしなければ、先は開けないんだぞ』と、思わず発破をかけてしまいます」

▼清水氏の経歴
1965年:帝京高校土木科卒業関東配管(現・キャプティ)に入社
2012年:同社を定年退職後、高齢社に入社キャプティ住宅設備部に出向