神社やお寺、教会は、不動の人気観光スポット。神社仏閣めぐりを趣味とする人も増えている。その一方で、「写真の無断撮影はご遠慮ください」と呼びかける宗教施設も少なくない。屋内の核心部分や、仏像など由緒あるモニュメントの撮影は、厳格に禁止、あるいは「フラッシュ禁止」「三脚禁止」などと制限されることがある。
さらに、外観をも無断撮影禁止とする宗教建造物が一部にある。営利目的で撮影するカメラマンに対し、シャッター回数や出版物の刷り部数ごとに料金を請求する場合もある。
では、注意書きを無視し、あるいはうっかり気づかず、建造物を撮影し、それをブログに掲載したり出版したりした場合、どのような法律的な問題が生じるのだろうか。
まず著作権についてだが、実は、建造物に著作権が認められるのは例外的といっていい。また、仮に著作権が認められても、著作権法46条の規定により、写真撮影して出版物などに掲載しても著作権侵害とはならない。
次に、いわゆる「パブリシティ権」の問題はどうだろうか。神社仏閣などを撮影し、広告に使うケースを考えてみよう。神社仏閣の写真が顧客の目にとまり、業者に儲けをもたらす可能性がある。そこで、そのような顧客吸引力を保護するために「パブリシティ権」という概念があるが、現時点での最高裁判所の判断は、芸能人やスポーツ選手など、人間のみに認めるというもの。神社仏閣のパブリシティ権は法律上保護されない。
知的財産権に精通する、竹田綜合法律事務所の木村耕太郎弁護士は「撮影禁止ルールを破って写真を撮る行為は、神社仏閣の『敷地』管理権の侵害として、問題が処理されうる」と話す。写真撮影を制限する対応は、その神社や寺院などが持つ敷地の管理権(「所有物の使用、収益」)を根拠に許されるわけだ。
民法206条は、一般論として「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する」と定めている。地主が自分の土地を使ってトクをしようとする行為は、原則として他の誰にも差し止められない。これは「私的所有権絶対の原則」と呼ばれ、国家にも干渉されない神聖な権利だとされている。