宗教団体が利益を追求しない存在であったとしても、あるいはその建造物が文化や歴史と結びついた公共財であったとしても、敷地を所有していれば、その所有権は絶対であり、敷地内でルールに反して撮影すれば、不法行為として、損害賠償を求められる可能性がある。

「ただ、撮影禁止の施設であっても、公道からの撮影であれば、プライバシー侵害など別の問題が生じない限り、法律上許される。撮影料を請求されても支払うかどうかは自由」(木村弁護士)

なお、敷地内から撮影する場合、「不法行為の成否は、敷地管理者が看板などを立てて、撮影禁止のルールを明示しているかどうかが分かれ目になる」(同)。

撮影禁止の看板が設置されていなかったため、敷地内での撮影が不法行為にならないとされた判例がある。私有地に根を下ろすカエデの大木を、カメラマンが地主に断りなく撮影し、写真集にまとめて出版したケースに対してだ。

このケースでは、「撮影には許可が必要」との看板が設置される以前に、カメラマンがカエデの大木を撮影し、土地所有者の許可を得ずに出版したことに対し、原告の土地所有者が所有権の損害だとして、出版差し止めと損害賠償を求めたが、原告が敗訴した。

「撮影時に看板が設置されていれば、損害賠償が認められた可能性が高い」(同)

風光明媚な場所に設置される無粋な注意看板ではあるが、法律上の争いとなったときには意味を持つのだ。

(ライヴ・アート= 図版作成)