私は、1万人以上の企業経営者・管理職から、成功の秘訣や失敗の原因をヒアリングしてきました。彼らは、40代を振り返ってみて、「ビジネス人生の最大の転機だった」と異口同音にいい、その一方で最も後悔していることもほぼ共通していました。「40代では、仕事もプライベートももっと充実させられたはずなのに、時間がなくてできなかった」といいます。

では、彼らには、なぜ時間が足りなかったのでしょうか? 40代は、20代、30代とは比べものにならないほど忙しくなるからです。順調に昇進していけば、多くがリーダーやマネージャークラスに就任している年代。ところが、中間管理職になると、自分で自由に使える時間が、極端に少なくなってしまうのです。

担当業務のことで役員に説明に行ったり、部下の相談に乗ったり、多くの時間を割かれます。若手のときは、上司や先輩といった「上」の人たちだけが相手だったのが、「上下左右」の大勢の人たちを相手にしなければならない。取引先と重要な交渉をする機会も増えます。しかも、一昔前の管理職と違って現在のマネージャーの大半は、自らも実務をこなす「プレーイングマネージャー」。仕事量でいえば、「30代の200~300%」に増えたといった感覚なのです。

30代のときは、仕事が増えても残業や休日出勤をすれば、クリアできたでしょう。つまり、自分の“予備時間”を使って、仕事の帳尻合わせができたわけです。ところが40代になると、30代と同じやり方では、激増した仕事を消化しきれません。仕事が中途半端になり、不本意な結果に終わってしまいます。

たとえばプレーイングマネージャーは、自分が担う実務と部下の育成を両立させなければなりません。時間が足りないので、自分の実務に没頭すれば、部下の育成が疎かになり、部下の育成に力を入れれば、自分の実務に手が回らなくなるという事態に陥りがちです。