闘病の闇に呑み込まれやすいのは、心身ともに強い人?
昨年11月、1年2カ月ぶりに元女子プロレスラーでタレントの北斗晶さんが芸能活動を再開され、勇気づけられたがん闘病者とその家族は多いかと思います。わが家もそうでした。術後1年の検査で、ほかの部位にがんの転移が見られなかったことから復帰を決意されたので、希望につながり、前向きになったのでしょう。
それでも一昨年前の9月に手術を終えてから翌年4月まで抗がん剤治療、さらに放射線治療を行い、現在もホルモン治療をされているため、無理のない範囲で元気な姿を見せてくれれば、と思っています。少しでもつらいと思えば無理は禁物です。これは北斗さんのように心身ともに強い人ほど、闘病の闇に呑み込まれやすい、と思えてならないからです。
私は仕事柄、何度かがんの名医を取材したことがありますが、「前向きな人、まじめな人ほど検査の結果が悪かったとき、落ち込みすぎて闘病がうまくいかなくなることがある」という医師は少なくありませんでした。
この点において、北斗さんは当てはまると思います。芸能活動を再開するにあたり、自身のブログで「とにかく一生懸命やる。この一生懸命が、実は1番大切で1番大変な事。自分の物差しでの一生懸命と、人の考える一生懸命は違うから。私自身の物差しを今まで以上に1センチでも2センチでも長く出来るよう、頑張っていけたらと思っています」とつづっていることからもわかります。
このようなことを書くと、北斗さんの決意にケチをつけるのか! と怒りを覚える人もいるでしょうが、北斗さんほど前向きでまじめ、そして心身ともに強い人は、めったにいないと思うのです。尊敬できることなのですが、がん闘病となると心配になります。
一昨年の手術直後もブログでも気丈に「私……決めたんだ、どんな形になるか分からないけど、いつかこの傷も全て世間の皆さんに見せようと思ってるんだ。こんな風になっちゃうんだよ!! って。乳癌撲滅の為に裸を見せる位、役に立てるならいいと思ってる」とつづっています。胸を締め付けられるような決意です。ところが、手術から1週間が経過した時点でも、「まだ観てないのよ……胸を」と告白。これは闘病の闇に呑み込まれてしまっているからでしょう。まずはご自身のためだけのことを考えてほしい。そう願わずにはいられません。
心身ともに強い? と思われる方もいるかもしれませんが、私がここまで北斗さんの心身が強いと思うのも、20年ほど前、女子プロレスラーだった北斗さんが大怪我をしながらも、奇跡の復活を果たしてからの試合を観たからかもしれません。