首の骨を折りながらも復活したデンジャラスクイーン

北斗さんといえば「鬼嫁」として知られ、強い女性のイメージがありますが、実際に女子プロレスラー時代には全日本ジュニア王座、世界タッグ王座に就くなど、その強さは折り紙付きで、一流選手として活躍されていました。まさに血のにじむような努力を重ね、心身ともに強かったからこその偉業です。

ところが、試合中に首の骨を折り、数カ月間ベッドに寝たまま首を動かせない状態になります。医者からは引退を勧められますが、プロレスを続けたいという強い想いとファンからの後押しで復活。「復帰したら30歳過ぎには後遺症で体が動かなくなる可能性もある」と医者から忠告されての復帰です。この点においても心身ともに強くなければ、プロレスラーで居続けることは不可能だったと思います。

首に爆弾を抱えているというのに、北斗さんはヒールに転身。新たなスタイルを模索し始めます。この頃の北斗さんの試合を私は観ましたが、スピード、パワー、テクニックに驚いただけでなく、首の爆弾を感じさせないほどの圧倒的な強さ、思いっきりのよさ、そして、凄まじいまでの闘志に感動したのを今でも覚えています。

北斗さんの伝説は、ここから始まったといっていいかもしれません。「ミスター女子プロレス」「女子プロレス最強の男」の異名をもつ神取忍と血みどろの抗争を繰り広げて「デンジャラスクイーン」と呼ばれ、日本だけでなく覆面レスラーとしてメキシコでも活躍。女子プロレス界を盛り上げていきます。首に爆弾を抱えているというのに、ここまで活躍できたのも、医者から復帰は無理、といわれたにもかかわらず、それを克服した自信も大きかったのだと思います。

ただ、がん闘病の場合、常に死の不安がまとわりつきます。どれだけ前向きかつまじめに対峙したとしても、努力の甲斐も虚しく命を取られることが珍しくない病です。心身ともにどれだけ強くても、です。不条理な病といってもいいでしょう。

だからこそ、北斗さんには、肩の力を抜いて、自分のためだけに闘病生活を送ってほしいと思うのです。心身ともに強靭な人は、頑張ろうなんて思わなくても十分に頑張れているものです。いい加減に考えているくらいで、ちょうどいいのかもしれません。そうすることで闘病生活がうまくいき、ひいては家族をよろこばせ、ファンに勇気を与えることにつながるのではないかと思うのです。

北斗さんの闘病がうまくいくことを、願わずにはいられません。

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