「仕事にやる気が出ない」「もっと頑張らなくては」──。こんな悩みを抱えている人は多いのでは。今大ブームのアドラー心理学は、無理に頑張らなくても、自分のやる気を引き出せる方法を教えている。やる気をなくしてしまった7つの症状別に「やる気が湧く行動習慣」を紹介していく。

(7)自尊心ガード型

コントロールしやすいプロセスに注目する

プライドが高いタイプの美徳は、なんといっても常に高い基準を目指し、志を高く掲げて、責任感も強いこと。その分、完璧を求めるあまり、「失敗したくない」という思いも強い。そのせいか、少しでも難しく感じる課題には及び腰となりやすい。チャレンジする前からやる気をくじかれてしまうこともあるのが弱点だ。

こういうタイプに行動イノベーションの専門家である大平信孝氏がお勧めするのは、行動のハードルを下げること。たとえば企画書作成という業務の場合、「一気に完成度の高いものを仕上げなくては」と思うと誰でも気が重い。気負いすぎてなかなか着手できなくなるのだ。そこで、最初の一歩はグンとハードルを下げてみる。たとえば、以前につくった類似の企画書を取り出す。仮のタイトルだけを入力してみる。参考に使えそうな資料を机に並べる。こうした絶対に失敗しようがなく、たった10秒でできそうな行動からスタートするのがコツだという。

メンタルコーチの平本あきお氏の経験では、プライドが高く、常に完璧を求める傾向にある人は、子供の頃から「結果」にフォーカスしてきた人が多い。「難関大学に現役合格できた」とか、「ピアノのコンクールで優勝できた」といった具合に、周囲に褒められる結果を出すことで、揺るぎないプライドを構築してきた。そのため、いい結果を出せそうにないことには、どうしてもやる気が湧いてこない。

平本氏は、「結果」ではなく「プロセス」に注目しようと提案する。というのも、結果よりプロセスのほうが自分でコントロールしやすいからだ。たとえば、「コンペに勝つ」といった結果には届かなかったとしても、「そのために部が一丸となって頑張った」というプロセスを讃えることができれば、あまりプライドが傷つかないで済む。

アドラー心理学を使った研修やカウンセリングで定評のある岩井俊憲氏は、「あらゆるところで勝たねばならない『常勝神話』を捨て去り、『負ける』トレーニングをしてみよう」と提案する。「仕事の中で、負けるチャンスはいくらでもある。小さな負けを繰り返すことで、失敗への免疫が高まる」という。イチローのような超一流のプロ野球選手でさえ、打率は3割台だ。普通のビジネスパーソンが「完全な人間になるのは無理」と割り切ろう。失敗したっていい。落ち込んでも構わない。

「不完全な自分」をありのまま認めること、それが「自己受容」だ。「自己受容」ができるようになると明日への活力が湧いてくる。「自己受容」ができないからクヨクヨ自分を責めてしまうのだとアドラー派の心理カウンセラーでもある小倉広氏も指摘する。

そのためには訓練が必要だ。一番効果的なのは失敗を含めてありのままの自分をさらけ出せる相手を見つけ「受容」してもらうこと。「家人なり友人なり、たった一人でいい。弱音をそのまま受け止めてもらう体験を重ねよう」と小倉氏。もし身近にそうした人が見当たらなければ、「プロのカウンセラーを頼ったり、行きつけのクラブのママに打ち明けてみるのも手」と勧める。「受容」される体験を重ねるうちに「自己受容」もできるようになるのだ。