みんなが「楽したい」と言えば社会は変わる

【田中】みなさんはこれからどういう人間になりたいですか?

【常見】僕は昭和の文化人になりたいんですよ。数年前の内田樹みたいなポジションになりたい。彼の主張は8割くらい賛同していないけど。世の中に発言力があって、物書き業と教育を楽しんで、浮世離れした生活をしていますよね。僕はすでに3分の1ぐらい叶えています。おかげ様でサラリーマンの何倍かの年収はありますし、ずっと輸入車に乗っているし、おいしいものを食べている。だから、このままの生活を続けていきたい。これ以上は稼げなくてもいいけど、今より生活レベルは下げたくない。僕はお金が「中ぐらいに好き」なんです。

【河崎】た、樹はそんな人間じゃなーーーーいっ!(編注:河崎さんは内田樹氏の大ファンです)

【田中】僕はこれといって何になりたいとかはないから……土地持ちになりたい(笑)。もうちょっと楽をしたいと思います。

【常見】それは大事! もっと日本で「楽する」という言葉は言われなければいけないと思う。「楽しい」はいいけど、「楽する」は言っちゃ駄目みたいな風潮はありますよね。みんなが「楽したい」と言えば、社会は変わるかも知れない。

【田中】社会が進歩していないですよね。どんなにテクノロジーが進歩しても、生活がまったく楽になっていないから。

【河崎】私も結局は昭和への回帰志向があるのかもしれない。目指していく先は昭和なんです。林真理子さんは代々木上原に御殿を建てて優雅に暮らしていますが、レポートに来た安住紳一郎アナと手が触れ合って「およしになって」なんてやっていたんです。私もあれがやりたい!(笑)昭和の男の大作家がやっているようなことをやっているんですよ。本当にカッコいい。私も物書きを続けて、ワインセラーにシャトーマルゴーを詰め込んで、イケメンと手が触れ合ったりしたい! それが私のリビドーです。

【おおた】僕は「こうありたい」というのが元々ないんです。とりあえずの目標は100冊100万部を達成するまで書き続けていたいですね。

【常見】欲がありそうで欲がないのが40代の特徴だと思います。でも、ユニクロなどのファストファッションやシェアハウスなんて吐き気がする。ファストファッションは絶対に着たくないし、シェアハウスは住みたくない。

【田中】では、最後に河崎さんのまとめの一言を。

【河崎】私の本を読んでいただいたということは、みなさんの体の中に私の言葉が音楽のように響いたことだと思うんです。私はそれがとても嬉しい。響いたことによって、自分の中から音楽のように言葉が出てくるかもしれない。ならば、それはぜひ外に出してほしいですね。別にSNSとかじゃなくていいんです。日記でも、一人ごとでもなんでも。今日はどうもありがとうございました。

40代は生きづらい?~河崎環、おおたとしまさ、田中俊之、常見陽平座談会【前編】