活発な会議でなければ意味がない
私が再建指揮を命じられた日本電産シバウラで、再建が始まって数カ月が経った頃に開いた、全社員集めての研修会での出来事です。
永守重信社長は、日本電産が買収したすべての会社を、1社あたり年数回ほど回って、このような全社員参加の研修会を開催しておられました。再建にあたっては、その再建の成否を決めるのは従業員の意識改革の進展いかんですから、年間のすべての休日をグループ企業の社員研修にあてて、スピードと徹底の企業文化の形成に努められるわけです。
当時は、プロジェクターなどはなく、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)でしたが、そこで使う原稿はすべて永守社長の自製でした。通常の会社によくあるような、企画部門の秀才が作成したようなものではありません。内容も各社の状況に合わせてすべて異なっています。
それだけ気合いのこもった原稿をもとにした1時間ほどの講話が終わり、司会進行役が、「では、どなたか質問は?」と会場に呼びかけます。ところが、そう言われた途端、皆が下を向いてしまって、押し黙ったまま。誰も質問したり、意見を述べたりしようとしません。会場に気まずい空気が漂います。
「他のグループ会社は、はい、はいと、どんどん手が挙がるぞ。そういう会社にならなければダメだ。会議でも研修でも活発なものでなければ、あかん」
そういう言葉を残して、永守社長は、次の目的地に向かわれました。その後も、会議のたびに、「自分の自慢話をしろ」「自慢話が飛び交うような会議にしろ」ということは、しばしば口にされていました。