「全部食べられるかな……」。コメダ珈琲店のフードは分量たっぷりで、常連客はそれを目当てに注文するという。なぜ分量が多いのか。

「こんなに量が多いとは」「全部食べられるかな……」

初めてコメダ珈琲店でフードメニューを頼んだ人の多くは、こんな感想を持ちます。同店のフードは分量たっぷりなので、逆に常連客はそれを目当てに注文します。ドリンクメニューもそうです。たとえばクリームソーダの上にのるソフトクリームは、グラスからはみ出すほどのボリュームです(後出の写真)。なぜ、コメダの飲食メニューは分量が多いのでしょうか。

ボリューム満点の「ジャーマン」

「お客のオトク感」に訴求する名古屋型喫茶店

よく「名古屋人はケチだ」と言われますが、国内各地で多くの企業を取材し、生活文化とも向き合ってきた立場では違和感があります。「締めるところは締め、使うところは使う」気質だと思うのです。その象徴が結婚式の豪華な引出物であり、喫茶店のモーニングです。

特に名古屋地区で人気の飲食店を取材したり、時には一利用客として行って感じるのは、予想以上の分量でサービスする店が多いこと。「メニューを見て期待して頼んだら、量が少なくてガッカリした」という経験を持つ人もいるでしょうが、コメダのような名古屋型の喫茶店でそんなことをしたら生き残れません。お客にソッポを向かれてしまうからです。

「クリームソーダ」のソフトクリームもたっぷり

コメダ創業者の加藤太郎さん(現・珈栄舎代表取締役)は、こう話していました。

「名古屋は『お値打ち感』のあるものを出す文化です。カツサンドのキャベツやスナックメニューに添える野菜もたっぷり入れます。たくさんの野菜もやり続けることが大切です」

この話に続けて、常連客を獲得するこんな秘訣も明かしてくれたのです。

「天候不順で野菜の収穫に影響が出て、レタスやキャベツやトマトなどが値上がりすると、野菜を減らそうとする店もあります。とんでもない。絶対にそうしてはいけません。いま、野菜が高いことを主婦のお客さんはよく知っているのですよ。『こんな時期なのにコメダはたくさん野菜を出してくれる』と喜んでくれてリピーターになってくれます。『高い時ほどチャンスなんだよ』と周囲にも伝え、量を減らすことなど考えませんでした。そのコストアップなんか、たいしたものではありません」

この手法で常連客を増やしてきたのです。先日、筆者のもとにこんなメールが届きました。

「先日もコメダのエビカツサンドをひとりで全部平らげました! あのボリュームはしっかり食べる人にとってはうれしいですし、女性はシェアしても満足できる量なのでいいですね」(20代の女性会社員)