キリンとコカ・コーラの個別事情とは

キリンホールディングス(HD)とコカ・コーラグループが、資本業務提携に動くようだ。アサヒグループHDは、たて続けに海外ビール会社の買収に動いた。その買収金額は、合計すれば1兆円を超す。飲料業界の今後を探ってみよう。

多くの業界がそうであるように、飲料業界でもM&A(企業の買収・合併)が急ピッチで進められてきた。少子化の影響もあり、大きな需要の伸びが望めないことが背景にあることはいうまでもない。

ノンアルコール飲料でいえば、アサヒグループHDはカルピスを、サッポロHDはポッカコーポレーションをそれぞれ買収。日本たばこ産業(JT)から自販機事業と飲料ブランド「桃の天然水」などを買収したのはサントリー食品インターナショナル(サントリーHD傘下)だ。

キリンHDは、ダイドードリンコとの自販機での提携に続き、今回のコカ・コーラグループとの提携協議開始の発表である。大塚HDと自販機で提携している「おーいお茶」の伊藤園、フランスのダノンの出資を受けるヤクルト本社なども含めて、今後も飲料業界の合従連衡がストップすることはないだろう。2009年から10年にかけては、キリンHDとサントリーHDの統合話もあったほどだ。

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キリンHDとコカ・コーラグループの個別事情もある。

キリンHDは15年度期、ブラジル事業の不振などもあって500億円に迫る最終赤字を計上したが、「生茶」や「メッツ」「午後の紅茶」などの飲料事業を手がけるキリンビバレッジの不振も影響した。同社の前期の売上高営業利益率は1.5%と、グループ全体の5.6%を大きく下回り、最終損益も2期連続の赤字だった。16年度期は3%には乗る予定だが、6%前後で推移しているサントリー食品インターナショナルに比べれば、依然として低い水準にとどまる。そのため、店舗や自販機への共同配送によるコストカットなどで収益力のアップを目指したい、というところだろう。

破談になったサントリーHDとの統合交渉では、医薬事業の切り離しを求められたとされるが、その医薬事業やビールに劣らないほど、飲料事業を利益体質にするのがキリンHDの緊急の課題だ。

米国コカ・コーラの日本法人、日本コカ・コーラは、国内における飲料トップシェアの維持がテーマ。本社の最大のライバルであるペプシコ(米)はサントリーHDと関係が深いだけに、三菱グループのキリンHDと組むメリットも考えたのだろう。製造販売を担うコカ・コーライーストジャパンとコカ・コーラウエストは、17年4月に経営統合し、コカ・コーラボトラーズジャパンとして出発する。