お金の専門家に相談しても「答え」は求めるな

私がファイナンシャルプランナー(FP)として活動を始めて15年ほどになります。相談経験を通して、相談者の方々から数多くの気づきをいただきました。そのひとつが、人は「ココロ」で動くということです。

活動を始めた当初、私が受けた相談内容として多かったのは、生命保険や住宅ローンの見直しです。いわゆる「固定費」の見直しで、金融商品を変えるだけで生活水準を変えることなく支出をカットできるため、まず手をつけたい王道の見直し手法です。

ところが、いくら王道とはいえ、相談者自身が「実行」しなければ、すべて机上の空論。絵に描いた餅。何の意味もありません。

私がFPになってすぐのころは、まだ家計の見直しというものが、いまほど認知されておらず、金融商品を変えるだけで一生涯に支払うコストが数百万円、へたをすると1千万円単位で見直し効果が出て、非常に驚かれました。

それもあってか、当時多くの方に“見直し術”にご納得をいただき、実行していただくまで至ったように思います。それはそれですごくありがたく、やりがいも感じられました。

ところが、何割かの方はそうはいきません。数値的なメリットだけでは、「実行」という次のステップにいっていただけないのです。私はいつしかこれを「マインドブロック」と呼ぶようになっていました。

要は、気持ちの問題です。

どんな見直し方法もメリットとデメリットがあります。金銭的負担が減るというメリットに対し、何らかの保障がなくなるとか、これまで支払った保険料がもったいないとか、義理とか人情とか、金利変動の不確実性があるとか、面倒とか手間とか、何らかのデメリットも同時に必ずあるものです。

何をもってヨシと判断できるかは、その方の価値観や考え方、生活スタイル、経験などによるものであって、相談を受ける側の価値観は関係ありません。相談の目標は数値的メリットもさることながら、相談者本人のハッピーも満たされないといけません。