市内には市職員、OB、家族の有権者が20万人以上!

一般の人にはピンと来ないかもしれないけれど、日本全国の公務員労働組合はものすごい力を持っている。特に自分たちの「社長」である首長を選ぶ選挙のときは、その強力組織が団結して立ち向かってくる。2011年の大阪市長選挙のときに僕が経験したことを明かしたい。

大阪、特にかつての大阪市役所は酷かったね。まず公務員労働組合の組織率は98%以上。非管理職のほぼすべてが組合に加入。そして給料から組合費が自動的に天引きされる。大阪市の職員は4万人規模。大阪市長選挙のときには、この公務員労働組合がフル稼働するんだよね。もちろん自分たちのことを守ってくれる市長候補者を応援する。そこには大阪市の未来のことなど関係ない。大阪市役所の職員の給料や天下り先、職員の処遇をしっかり守り、そして職員の言うことをきちんと聞いてくれる市長かどうか。これが大きな判断要素となって、大阪市の職員労働組合は自分たちを守ってくれる候補者を全力で応援する。

大阪市役所

大阪市役所は東京都庁に並ぶ花形役所。役所の職員数も多いから、大阪市内にたくさんの職員が住んでいる。その家族や、それから役所OBを合わせると膨大な数の市長選挙有権者となる。これらが皆フル稼働する。大阪市内に20万人を超える市役所職員、OB、その家族などが市長選挙の有権者として住んでいると言われている。

大阪市長選挙では35万票を獲れば当選だから、この市役所職員パワーの凄さが分かるでしょ? 彼らを味方に付ければ、当選に必要な票は十分確保できるんだから。

何よりも、この職員の地域に対する影響力が凄い。大阪市には約330の自治会単位がある。小学校の校区に一つずつ、という感じ。大阪市役所はこれら自治会に様々な補助金を出している。この自治会の下部組織に、PTA、青少年指導員、民生委員、福祉ネットワーク推進委員などなどがぶら下がっている。地域活動をしている地域の顔役の人が、この自治会組織に皆所属している。これが大阪市名物の、大阪市地域振興会、略称「地振」。

さらに役所は、大阪市内のありとあらゆる業界団体に補助金を出している。医師会、歯科医師会、保育所連盟、幼稚園連盟、商店街組合連盟……。役所が本気で号令をかけると、これらが一斉に動く。

この地域振興会や業界団体は、大阪市のために公益的な活動をやっていることは確かだが、しかし市長選挙において市長に恩を売る立場が強くなり過ぎて、大阪市政を歪める要因にもなっていたことも間違いない。要するに、市長及び市役所は、これらの団体の言うことをとにかく聞かなければならないような状況になっていた。

特に大阪市政というのは、大都市経営の側面だけではなく、地域の細かな政策の実行を任務とする。保育所を作ったり、小学校を統廃合したり、図書館を移動したり、地域パトロールをしたり、まあありとあらゆることが仕事となっている。それらの政策を実行するに当たっては、大阪市役所は「地振」の同意を取り付けていた。すなわち大阪市政の決定権を地振が握っていたと言っても過言ではない。

大阪市の職員はそういう仕事の進め方を当然としてきたので違和感を覚えないのであろうが、外部の僕から見ると、大阪市役所の地振への配慮は度を超していた。僕が大阪府知事から大阪市長に転じるために、大阪市長選挙に出馬した際、大阪市役所は組織としてフル稼働し、僕を落選させるために、対立候補であり現職の大阪市長・平松邦夫氏の応援を全力で行った。僕は大阪市役所をぶっ壊す!! と言っていたからね。

平松市政での副市長の一人が事実上の選挙対策本部長。副市長から役所に指示が出ると、それは上司からの命令となり、組織が一気に動く。区長は区長会議に集められて選挙情勢の報告会と作戦会議。区役所と地振・業界団体が一丸となって票を集める。市役所は、平松氏の応援に繋がるパンフレットを作成して配布する。税金でやるんだから、そりゃやりたい放題。

選挙前には、地下鉄御堂筋線の車内放送が平松さんの声に代わっていた。僕は大阪市営地下鉄を民営化することを公約に掲げたけど、地下鉄職員は公務員の身分がなくなるので猛反対。当然平松氏の応援をするんだけど、選挙前には、大阪市営地下鉄は頑張っているよ!! というテレビCMまで流した。そうそう、選挙前だけ、地下鉄の運賃が値下げになったよ。

平松さんと役所幹部がぞろぞろと揃って各区回り。地域住民との市政タウンミーティングと称して、市民からの要望聞き。これも役所を使った選挙運動と紙一重。会場費用から、スタッフとなる役所職員の人件費は全て税金。そしてこれまで領収書の添付を求めていた「地振」への補助金が、領収書抜きの交付金に変更。1地振に100万円の交付金。これに加えて、公務員労働組合としての選挙運動。いやー、公務員組織が本気で選挙をやったらこりゃ勝ち目ないよ。税金、組合費と職員、そして地域有権者への影響力をフルに使えるんだから。

大阪市の例を話したけど、全国の多くの自治体はだいたいこんな感じ。僕が市長に就任して、これらをことごとく禁止していった。禁止する方が全国的には例外だろう。公務員にも政治活動を完全自由に認めろ!! と、頭でっかちの自称インテリは叫ぶだろうけど、このような現実の問題に対してきちんと対処しないと、公務員の権利を守る市町村長や市町村議員ばかりが当選して、選挙が歪んじゃうよ。

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.19のダイジェスト版です。全文はメールマガジンで!!

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