「民進党は鈴木氏の足を引っ張っているのか」

10月23日投開票の衆院補選で、東京都第10選挙区では自民党の若狭勝氏、福岡県第6選挙区では自民党追加公認の鳩山二郎氏が当選した。いずれもゼロ当確(開票率0%で当選確実)という圧勝だった。

そもそも東京10区は東京都知事に転出した小池百合子氏の地盤であるため、知事選で自民党東京都連からの除名を覚悟で小池氏を応援した若狭氏の優勢は決定的。福岡6区も6月21日に逝去した鳩山邦夫元総務相の弔い合戦だったため、次男の二郎氏が有利に選挙戦を展開した。

その中で特に苦戦を強いられたのが、民進党から東京10区に出馬した鈴木庸介氏だろう。豊島区生まれで、立教大学出身。NHKに就職した時は「豊島区担当」を志願したほどの郷土愛を持つ鈴木氏は、8年前に国政を目指して民主党(当時)の門をたたいている。

しかしこの時に東京10区の公認候補として選ばれたのが江端貴子氏だ。鈴木氏は江端氏が2012年と2014年の衆院選で落選し、政界を引退するまで待たざるを得なかった。そして衆院補選で念願の初出馬となった時、大きな困難が待ち受けていた。“小池百合子東京都知事”という「壁」と“蓮舫民進党代表”という「足かせ」だ。

告示された10月11日には、すでにその明暗は分かれていた。小池知事を迎えて池袋西口で行われた若狭氏の「第一声」には、下村博文自民党東京都連会長を始めとして、菅原一秀衆院議員や井上義久公明党幹事長ら与党の国会議員が10人以上も参加した。さらに二階俊博自民党幹事長が「ここに来る時に安倍(晋三)総理に電話したら、『16日に池袋に応援に行く』と言っていた」と披露。約500人の観衆とともに、大いに盛り上がっている。

一方で同日午後に大塚駅前で行われた鈴木氏の出陣式に集まったのは、200人に満たなかった。選対本部長を務める松原仁東京都連会長に続き、連合東京の岡田啓会長と蓮舫代表が演説したが、盛り上がりは若狭氏の街宣に及んでいない。理由は「野党統一候補」と見なされていた鈴木氏なのに、党本部によって野党からの応援を遮断されていたことだ。

それが露呈したのは、10月20日午後5時からTeNネットワーク2016が池袋駅前で開催した「市民と野党の共同候補鈴木ようすけ応援街頭演説会」だった。なんと鈴木氏本人は欠席し、彼の街宣車が“参加”していたのだ。そもそも同企画は同団体が鈴木氏選対に持ち込んだもので、10月18日に日程調整を求めた時には、20日午後5時からの鈴木氏の日程は空いていたという。しかしその後、選対は同時刻に練馬区内での日程を入れてしまう。これには地元関係者から怒りに近い声が上がった。

「平日の夕方にわざわざ住宅地で街宣しても、一体どのくらいの人が聞いてくれるのか。民進党は鈴木氏の足を引っ張っているのか」

さらには以下のような証言もある。

「民進党本部は鈴木氏を共産党と一緒に立たせないという方針。鈴木氏には蓮舫代表と馬淵澄夫選対委員長から直接、『参加するな』と連絡があった」

民進党執行部がこのように過剰なまでの共産党アレルギーを示すのは、共産党を嫌う連合への配慮のためだ。だが結果的に連合は民進党から距離を置いた。原因は鈴木氏ではない、蓮舫代表自身にあったといえる。