企業の経理担当者から学ぶべき点は多い

富山市議会の政務活動費(政活費)の不正問題が連日報道されている。自民党系会派の議員を中心に責任をとっての辞職も相次いだ。領収書の金額を加筆して水増し請求するなど悪質な手口で、なかにはパソコンで自ら領収書を偽造していた議員もいたという。

不正行為が組織的に蔓延しているので、単なる議員個人のモラル問題にとどまらず、改善策も組織的な対応が求められるだろう。

日本経済新聞は、9月24日の社説で「目に余る富山市議会の不正」という見出しで取り上げ、改善策として、「領収書はすべてインターネットで公開する」「政活費の支給は実際に使った経費を後から支払う『後払い方式』にする」という2点を指摘している。

私は、9月に発刊した『経理部は見ている。』(日経プレミアシリーズ)を書くために、多くの企業の経理担当者に取材して、彼らがどのように会社の経費をチェックしているかをつぶさに見てきた。

一見すれば、政活費の取り扱いと、会社経費の課題は異なるように見えるが、改善策から逆算してみれば、経理担当者から学ぶべき点は多い。そこで、もし富山市議会事務局にベテラン経理担当者が入ったらどうなるかを考えてみた。

情報公開請求で領収書などを確認するのは有効な手立てであるが、どうしても事後的になってしまう。やはり支出する前にチェックするのでなければ、適切な運営を確保する改善策にはつながらない。そういう意味では、政活費を後払い方式にすることも当然のことだ。ベテラン経理担当者は、事前に渡す必要がある経費だけは企業での仮払いの処理を導入して、基本は後払い方式に変更するだろう。

今回の富山市議会の例では、白紙領収書を使った架空請求や、領収書に数字やただし書きを加筆する改ざんが繰り返されていた。領収書の金額を加筆すると全体のバランスが悪くなり、数字も筆跡と同様に各人の癖が出ることから、経理担当者が本気でチェックすればかなり分かる。怪しい書類を提出した議員に簡単な文書で照会すれば、その牽制効果は大きいはずだ。また領収書だけで支出するのではなく、納品書、請求書といった通常の商行為で求められる書類についても提出するように彼はルールを変えるだろう。そうすれば領収書にこだわって改ざんをしても意味をなさないことになる。

また支出が多い業者との取引内容や、繰り返し提出される領収書を集めて一覧表にすれば不正が明らかになる可能性は高い。ベテランの経理担当者は、「一件、一件の書類では分からないことでも、まとめると見えてくる」と語る。