2030年には、日本の労働力が800万人ほど足りなくなると予想されています。1学年に200万人以上もいた僕たち団塊の世代が、順番に労働市場から姿を消していくからです。

――それは、今働いている人にとってはいいことなのでしょうか。

もちろんです。今後は、あらゆる業界や業種で人手不足になります。1学年に100万人ちょっとしかいない20代、30代前半の若者は、労働市場では引く手数多になるでしょう。

――日本の若者は恵まれているのですね。

ええ。若者にとって最も辛いのは「ユースバルジ(youth bulge)」ですよ。

――えっ、バジル? どういう意味ですか。

「ユースバルジ」とは、「若者の膨らみ」のことで、人口ピラミッドの若年層が大きく膨らんでいる状態を指します。親の世代よりも就職機会が限られるため、失業して「やけくそ」になってしまうというのです。

その結果、若者が犯罪を犯したり、テロを起こしたりするので社会が不安定になります。ISのテロなど原則としてはユースバルジで説明できます。「バルジ大作戦」もありましたね。第二次世界大戦末期、敗色濃厚だったドイツ軍がアメリカ軍の前に急に膨らみ、大反撃に出たことから、そのように呼ばれました。

――日本はユースバルジとは反対の状況だから大丈夫なのですね。

はいそうです。やる気と体力さえあれば、まず食いっぱぐれることはありません。働く場はたくさん用意されているので、健康であることが何よりも大切です。でも他人よりいい仕事をもらおうと思ったら、語学を勉強するなどして、自分の価値を高めることが大切です。

――その健康を保つためにはどうすればいいのでしょうか。

たっぷり寝て、たっぷり食べて、よく運動して、上司の悪口を目一杯言うことです。健康な体と精神のバランスを保つようにすればずっと働けます。

――上司の悪口も、ですか?

僕は、職場の労働条件は、100%上司で決まると思っています。いつも暗い顔をした、怖い上司のもとで働くのは嫌だけれど、上司がいい人であれば会社に行くのも楽しいでしょう。

――確かに……。

でも、「上司に恵まれて毎日楽しい」と言える人など実際はほとんどいません。上司の悪口を言う、というのは一種の比喩ですが、心の許せる友達がいて何でも好きなことが言える、という環境が大切です。ストレスをためておいてもロクなことはありません。

Answer:ストレスをためないように、上司の悪口を目一杯言いましょう

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険会長 

1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長などを経て2013年より現職。経済界屈指の読書家。