上場企業がIRを一段と重視している。分かりやすい情報発信に工夫する企業も少なくない。では、投資家はどのように銘柄を選び、どんな心がけで株式投資の成功を目指すべきか。日本IRプランナーズ協会理事長で、経済評論家の木村佳子さんに聞いた。

IRフェアやセミナーで自分の目と耳で判断する

──企業がIR活動に力を入れています。その背景を聞かせてください。

【木村】近年、日本の上場企業数は増加傾向にあり、2016年7月末時点では3645社です。1990年末には1750社ほどでしたから、2倍以上に増えたことになります。上場企業といえども投資家に対して存在感を高め、自社が持つ特色を際立たせて幅広い投資家に知ってもらい、株式の保有率を高めてもらおうと、IR活動を活発化させているのです。

機関投資家や海外投資家は企業の業績に敏感に反応して株を売買することが多いですが、個人投資家のなかには株主優待を楽しみたいとか、その企業のファンだからと株を持つ人も珍しくありません。ですから機関投資家や海外投資家が売っても、個人投資家が買うことで、株価下落に一定の歯止めがかかります。そこで企業はIR活動のターゲットを個人投資家にも拡大し、バランスがとれた株主構成を目指すのです。

──具体的には、どのようなIR活動が行われていますか?

【木村】企業自身が投資家を招いて事業説明会を開く例もあります。また投資関係の新聞社や取引所、IR専門企業などが主催するIRフェア、セミナーなどもあります。企業ごとのブースで来訪者にフェース・ツー・フェースで説明したり、経営者自ら壇上でプレゼンしたり。私たち評論家が投資について講演させていただく時間が設けられることもありますね。昨今、とても盛況ですよ。

株式投資に興味のある人は、ぜひお出かけになるといいと思います。「自分の目と耳で判断する」ことは、とても大事。例えば「企業の配布資料には、上場市場名や証券コード、単元株数(売買の最小単位)も明記され、行き届いているか」「ブースの担当者が、きちんと来訪者の目を見て話すか」。一見、ささいなことも、自分のお金を託す企業を評価するポイントです。