「ありえない」「冗談か?」7月中旬、英国で2人目の女性首相が誕生し、主要閣僚職の一つ外相にボリス・ジョンソン氏が抜擢されると、驚きと困惑の声が世界中を駆け巡った。親しみやすい政治家として前職のロンドン市長時代は人気者だった。一方で「不適切な発言」でしばしば物議をかもし、アメリカ大統領候補のドナルド・トランプ氏と比較されたりもしている。「世界一外相に不適切な男」をテリーザ・メイ首相が抜擢した理由は何か?
自分のことを「大ウソつき」と評したフランスのエロー外相とも笑顔で仲のよさをアピール。(写真=AFLO)

外相就任1カ月の評価はどうだ?

外相就任後まだ1カ月だが、これまでのところ、ジョンソン氏は特に大きな失策もなく新たな侮辱の言葉も発していない。初の外交イベントは7月18日、ブリュッセルで開かれたEU外務理事会の会合だった。フランス語を交えて話したジョンソン氏は、関係者に終始礼儀正しく外交的な態度で接した。後にエロー外相がジョンソン外相は「過去の発言を否定しなかった」が「謙虚な態度だった」と記者団に語っている。

翌7月19日にケリー米国務長官をロンドンに迎えた際の記者会見では、米記者らが過去の失言について厳しくジョンソン氏を問い詰めた。ニューヨーク・タイムズの記者はケリー長官に対し過去に「大げさな誇張」を行い、「完全な嘘」をついてきたジョンソン外相を「信頼できますか」と問いかけた。米AP通信の記者はジョンソン氏がオバマ大統領には一部ケニア人の血が入っており、それゆえ「大英帝国を毛嫌いしている」という発言をしたことについて、謝罪するかと聞いてきた。同記者はジョンソン外相がクリントン氏を「精神病院のサディスティックな看護婦」と呼んだことも改めて指摘した。

ジョンソン氏は発言が「誤解されている」と説明しながらも、発言自体の謝罪はしなかった。過去30年間、ジャーナリストとして書いてきた「すべてに対して十分な謝罪をする」には時間がかかりすぎるからだという。針のむしろに座らされているかような会見だったが、ジョンソン氏は何とか切り抜けた。